桂浜へ電車(LRT)を走らせよう!【その5・〔続〕地上設備編】
【その4・地上設備編】から続きます。
軌間、架線電圧、ホーム高さは既存線を踏襲
基本的なスペックは、上の図の中に書いてある通りです。
軌間は書き抜かっていましたが、当然ながら既存の桟橋線と同じ「1067mm」です。これは、さすがに異論はないでしょう。
架線電圧は桟橋線他現在の軌道線と同じ「直流600V」と想定しています。これについては、「桟橋車庫前」~「孕橋」間にデッドセクションを設けて、新線部分はより効率の良い直流750Vとした方が良いという意見もあるかと思います。宇都宮のLRTは直流750Vで計画されていますし、直流600V~750Vのデッドセクションは伊予鉄道高浜線で実績があります。
それも一案ではあるのですが、そうすると乗り入れ可能な車両が極めて限られてしまいます。最初から対応している新型の低床車(現在運行中のハートラム・ハートラム2のことではありません)とVVVF化など大幅改造して対応させた従来車両に限られてしまいます。
せっかくの車窓が素晴らしい上に高知県屈指の観光地へ行く路線であり、電車自体も観光資源として一層盛り上げていくために、維新号、外国電車、200形(原型車)、おきゃく電車なども是非とも臨時・貸切運用で観光用として走らせたいところです。
直流600Vであれば、それらの車両もATS取り付け他最小限の改造で乗り入れ可能となります。以上より架線電圧は、現在の軌道線と同じ直流600Vが良いと考えています。
ホーム高さも、従来の路面電車と同じ低床ホームとし高さは300~350mmを想定しています。これについても、新線部分は高架で造るのだから低床ホームである必然性が全くないですし、桟橋線も短いし道路も広いのでこの際、「高知駅」~「桟橋車庫前」も含めてホームを高くして嵐電や都電荒川線方式に一新した方がいいと言う意見もあろうかと思います。
これは高知駅より北部への延伸や追手筋線(元乗務員さんが提案されています。これはさすがにホームを高くはできません)の兼ね合いの他、筆者も東西系統については路面区間もホームを高くしてJR線、ごめん・なはり線と一体化したネットワークを構築することこそが正統進化と考えている反面、南北系統はLRTに進化しつつも在来車両も改造の上引き続き走らせ、ストリートカー、チンチン電車、トラムの雰囲気を残す路線としたいと考えています。
車体幅は最大2650mm、編成長は最大60mに対応
車両限界は、従来の最大幅2300mmから2600~2650mmと大幅な拡大を想定しています。現在のとさでん交通起軌道線の最大幅2300mmというのは、路線バスよりも狭く、都電荒川線、長崎電気軌道、札幌市電と並ぶ最狭クラスです。2400mmちょっとの伊予鉄市内線(旧型車両)や筑豊電鉄、2500mm近くある広島電鉄、富山地方鉄道市内線、江ノ電などと比べるとその狭さは際立ちます。
せっかくの新線なので車両限界を見直す大きなチャンスです。従来の桟橋線区間も幸いにも距離自体が短い上に、直線主体で道路幅も広いので、新線部分の規格に合わせた改修は比較的容易だと考えらます。
(桟橋線の高知駅~潮江橋北詰間はセンターポール化されており、見たところ幅に余裕もありそのままでも最大幅2650mmに対応可能だと思われる 2018年2月18日)
普段からも沿線住民と桂浜への観光客が同じ電車に乗り、観光シーズン時はかなりの多客が予想されます。昔と違って、車椅子やベビーカーを押してのお客様、キャリーバッグを引いたお客様も当たり前になりました。それらへの対応を考慮したら幅にゆとりがある方が断然いいです。さらに、高知駅より北部へ延伸した場合、イオンモール関連や日赤病院の需要が加わることを考えたら幅のゆとりは絶対必要です。
最初は、広島電鉄や江ノ電と同様の2500mm程度で十分と考えていましたが、せっかくの新線ですし、想定する新型部分低床車では台車上の高床部分に2列+2列の転換クロスシートを設けることを考えたら、もう少し拡大して2600~2650mmと福井鉄道のフクラム(F1000形)と同等のゆとりは持たせた方がよいと考えています。
(想定している南北系統用の部分低床車両 ※ポートランドMAX、Wikipediaより転載)
ホーム長さは、既存の桟橋線も含めて全長28m級の大型低床車重連に対応できる60m(※)を想定しています。観光シーズン時や桂浜でのイベント時など多客時に、増発に限界のある単線区間での輸送力増強策として増結運用を考慮しているためです。(平日ラッシュ時は主に複線区間での需要が大きいため、原則増発で対応)
(※)併用軌道では軌道法により、原則として全長30mまでとなっています。実現するには、特認か法改正が必要ですが、宇都宮のLRTも将来は45mの編成長を予定しており、法改正の流れも期待できます。
詳しくは【その6・車両編】で述べますが、【その2・需要予測編】で述べたように、従来の単行車やハートラム程度の定員70名クラスでは、間違いなく輸送力不足が懸念されます。高知駅より北部への延伸も視野に入れるとなおさらです。それらを入れてしまうと必要以上に増発に迫られ、人件費や車両費が無駄に増加してしまいます。
日中(通常時)の運行間隔は、「高知駅」~「孕橋」5分間隔、「孕橋」~「雪蹊寺(長浜)」10分間隔、「雪蹊寺(長浜)」~「桂浜」20分間隔を想定するなら、孕橋以南へ運行する車両は、早朝、深夜、ラッシュ時の増便などを除いてフクラム(F1000形)やグリーンムーバー(5000形、5100形)など定員150人クラスの輸送力(単行車の約2倍)を持った車両が要求されるでしょう。
桂浜への観光客は、観光シーズン時は相当な多客が予想されますし、電車延伸によって現在より大幅に増加すると思われます。それを機にマイカーでの直接アクセス規制(パークアンドライド)を実施するならば、さらならる輸送力が求められます。
閑散期の平日日中は、桂浜発着20分間隔、大型低床車1編成(単行車2両分)で十分捌けるかと思われますが、閑散期であっても土休日やシーズン時の平日では、同じ20分間隔でも増結して大型低床車+単行車(単行車3両分)、もしくは大型低床車重連(単行車4両分)と輸送力強化が必要になりそうです。
さらに、最繁忙期や桂浜でよさこい祭りなどイベント実施時は、大型低床車重連(単行車4両分)かつ倍の10分間隔に増発して対応が迫られるでしょう。
そららを考慮すれば、ホーム長さは大型低床車両2編成分に対応した60mが求められると考えられます。
JR車両乗り入れなど将来への拡張性も考慮?
走らせる車両は、最大でも幅2650mm、全長60m弱までで、ホームも低床でその車両規格を前提に構築することを想定していますが、せっかくの新線であるのでそれに留まらず、将来への拡張性を織り込んだものにしてはと考えています。
大賛成のプランですが、津波の事は考えておかないと。うんと高いところを高架でつくる。いざとなればJR在来線から直通可能な線路にしませう! https://t.co/5o4HhI80lQ
— ばけた (@1eaves) 2018年1月18日
せっかくのJR在来線と同じ1067mm軌間なので、いざとなったら最低限の改修で、JR在来線規格の車両も乗り入れ可能な構造で造っておけば、JR土讃線から乗り換えなしで臨時列車やクルーズトレインが桂浜まで入線できるようになります。
ただし、高架の新線区間まで路面区間を通ってやって来るのか、果たして別の新線を経由してやって来るのか分からないですし、そもそも将来実現するかどうか分かりませんし、いくらJR在来線車両が走れるように設計しておいても、一部に急カーブが存在する以上、ボルスタレス台車の車両は入線できそうもないです。さらに、電化と非電化、さらにJR土讃線が電化されたとしても架線電圧の違いもあるなど、色々と難しい面はあります。気動車による乗り入れであれば比較的容易でしょうけど。
かなり難しい問題ですが、あくまでも「将来への拡張性」という意味でJR在来線規格に対応させておいた方がいいでしょう。
最高速度、保安装置について
新線部分は、軌道法準拠の軌道線ではなく鉄道法準拠の「鉄道線」とする考えのため軌道法による最高速度40km/hの制限はありません。直線が続くところなど速度が出せるところは、通常時は75km/hまで、回復運転時は90km/hまで出せるものを考えています。
所要時間は、はりまや橋~桂浜間で23~25分程度を目指しています。現在のバス路線は、最速で27分でほとんどが30分ダイヤ上かかっており(バスなので実際はそれより遅れると考えた方がいい)、それに比べると大幅な時間短縮となります。
鉄道線であるため保安装置は当然ながら必要になります。新設路線であること、高い安全性、イベント用など旧型車両への設置も考慮すればATS-Pが最も妥当でしょう。
JR東日本の仙石線や埼京線に導入されている、閉塞方式にとらわれずコスト削減も可能な最新の保安装置であるATACSも候補になりえます。ただし、維新号などの旧型車両を走らせようとすれば、そのままでは対応不可で、ブレーキ方式を電気指令式に改修する必要が出てきます。
既存の桟橋線も近代化してトータルでLRT化
先ほども、既存の桟橋線についても車体幅2650mmに対応させ、ホームも60mまで延長すると述べましたが、それに留まらずよりLRTとしてふさわしい路線になるためには、スピードアップ、定時性向上につながる改良が求められます。
(桟橋線「桟橋通二丁目」へ繋がる歩道橋よりはりまや橋方面を望む 2018年2月18日)
まず、最高速度も従来の40km/hは、さすがに遅すぎます。軌道法の改正が必要ですが50km/h以上に引き上げたいところです。
宇都宮LRTは「市街地50km/h・郊外70km/h」を目指す。市街地50km/hって遅くね?という意見はあると思うけど、市街地では電停の設置間隔が短め。最高速度より、事実上の信用乗車制導入と高い加減速性能で速達性を確保する方向性。https://t.co/YAUuDiq233
— NAL(COMIC 1☆13・に-02a) (@NAL_MUTHU) 2016年4月30日
無駄な信号待ちを減らすため、青信号の延長が可能な優先信号も導入したいところですし、道幅に余裕があるので安全性の向上面で軌道敷との間に縁石を設置してセンターリザベーション化も検討項目に入ってきます。
浜寺から電車で北上すると、御陵前電停の少し前で大小路(紀州街道)に入る。専用軌道状のセンターリザベーション。軌道脇はずっと花の植え込みが続き美しい。堺は街ができた当初から、遠い将来の物流を見越し、大小路はこの広さと直線だった。この写真のあたりはむかし旅籠が並び、今も旅籠町という。 pic.twitter.com/Y0l90jeID6
— 遠森慶★SORAKO (@tmk_8jasmin) 2017年5月28日
電停については概ね現行通りで問題ないですが、「桟橋通一丁目」~「桟橋通四丁目」間は比較的詰んでいるので、「桟橋通二丁目」と「桟橋通三丁目」は、中間の国道56号線との交差点部分に電停を新設し統合した方がいいでしょう。
以上の改良と運賃収受方式の見直しによる乗降時間短縮により、現在「はりまや橋」~「桟橋通五丁目」間で約10分要しているところ、実質さらに一区間増える「はりまや橋」~「孕橋」間を、1分短縮した9分で運行できるようになるでしょう。
高知駅前電停がそのままでは60mホームに改修できない、一部ではその編成長の車両が停まると後方の交差点にはみ出る箇所があるなどの問題もありますが、それらについても書き出すと長くなるので、また別の機会に譲ります。
【その6・車両編】へ続く
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桂浜へ電車(LRT)を走らせよう!【その4・地上設備編】
【その3・目的編】では、目的や目指すものについて整理しましたが、【その4】ではいよいよ地上設備を具体的にどのようにするのがよいかを解説していきます。
以下の地図をもとに話を進めていきます。【その1・概要編】で掲載した地図とは、予想される需要や運行上の問題により複線区間等を修正しています。
ルート案概略
ルート案、駅・停留場設置案は上の地図の通りです。
太平洋沿いまでの多くの区間は、はりまや橋から海岸線まで伸びる県道34号線と同じルートを辿るかたちとなります。
太平洋沿いの部分は、県道14号線(通称「花海道」)のすぐ北側に沿って敷設し、桂浜付近はトンネルで抜けて桂浜駐車場に設けた「桂浜」駅で終点となります。
駅・停留場の設置場所案は、現在のバス停の位置、駅間距離、全体的な利便性等を考慮しています。
沿線に新興住宅地が広がっていおり、運行本数も多くなるであろう「雪蹊寺(長浜)」までは複線としています。現在も長浜バスターミナルがあり、多くの路線バスの発着点でもあります。
県道34号線は、「桟橋車庫前」から「瀬戸西町三丁目」を設ける予定のサニーマートあたりまでは、すでに旧宇津野トンネル部分を除いて四車線(片側二車線)に拡幅されています。その半分を流用して敷設すれば、新たな用地買収はほぼほぼ不要で、建設コストを削減可能です。車線が減ることによる渋滞の懸念等については後述します。
(県道34号線・西灘バス停付近 2017年7月28日)
(県道34号線 一部区間には急カーブが生じる 2017年7月28日)
東側にある古い方の宇津野トンネル(南行き一方通行)を流用し、「瀬戸西町三丁目」以南は、東側の旧道に沿って敷設する関係上、四車線道路のうち東側半分を流用する形になるでしょう。
サニーマート付近では、現県道と旧道が分かれ、それぞれ二車線(片側一車線)になりますが、新線は東側の旧道に沿って通すのがよいと考えています。
(旧道と現県道が分かれる三叉路 2017年7月28日)
その理由は、現在の路線バスが旧道経由というだけでなく、現県道34号線の方に通そうとすれば、「三叉路を過ぎてすぐに急勾配が生じる」、「そもそも敷設スペース確保が困難」、「御畳瀬(みませ)集落から遠くなりすぎる」という問題があります。特に、敷設スペースが問題で、仮に単線にしたとしても、主要道路なのでまさか二車線のうち半分を潰して片側一方通行とするわけにはいきません。
一方、旧道の方は狭いですが、敷設にあたって車線を半分潰して片側一方通行にしても、前述の県道34号線が平行しているため大きな問題はないかと思われます。むしろ歩道がなく危険なため、積極的に一方通行化して歩道を設置した方がいいくらいです。
(長浜バスターミナル付近の旧道 道幅は狭く歩道もない 2017年7月28日)
新線についても最初の考えでは、本当は拠点駅となる「雪蹊寺(長浜)」までは複線としたいものの、「瀬戸西町三丁目」以南は、用地買収を最小限に抑える観点から、妥協して単線で敷設と考えていました。二車線道路を鉄道と道路で半分ずつ分け合う形です。
しかし、後述の宇津野トンネル部分と同様に、桂浜への多客が予想される時期は、増発が必要になります。「雪蹊寺(長浜)」までにある、中途半端な単線区間が運行上のネックになるという指摘を知り合いから受けました。特に遅延回復に対して脆弱になってしまいます。
そのため現在では、旧道部分や宇津野トンネル部分も含めて、「桟橋車庫前」から「雪蹊寺(長浜)」まで、完全に複線で敷設と考えを改めています。
(雪蹊寺付近の敷設ルート案)
なお、三叉路付近の「瀬戸西町三丁目」までで複線区間を打ち切って、そこを本数が変わる拠点駅とする妥協案も考えられますが、やはり「雪蹊寺(長浜)」の場所が、現在のバス路線では拠点ターミナルになっていること、その付近までニュータウンが発達しており、また長浜地区の中心地でもあること、御畳瀬(みませ)地区の入り口であることを考えたら、「雪蹊寺(長浜)」まで、利便性の高い本数を確保(日中は10分に1本)するため、建設費が増加するものの複線で敷設した方がよいと考えています。
「雪蹊寺(長浜)」までの旧道に沿う部分ですが、幸いにも駐車場や空き地が多く、建物も住宅やマンションというよりは、倉庫等が多く、立ち退きは大幅に困難ではないと考えられます。現状の二車線道路部分と合わせて、道路一車線(+歩道確保)と鉄道複線分確保する形に再編します。
(旧道沿いは駐車場、空き地、倉庫等が多い)
「雪蹊寺(長浜)」以南は、沿線人口も少なくなり運行本数も減らす前提のため(日中は通常時は20分間隔を想定)単線で十分と考えています。
問題は、「雪蹊寺(長浜)」を過ぎてから県道34号線沿いに復帰するまでの間、住宅地を貫く形になり、かなりの立ち退きが生じてしまうことです。
(「雪蹊寺(長浜)」~南海中学校付近のルート案 立ち退きが生じてしまう)
一応、平行させうる道路はありますが、中央線を描けないほど狭く、両側に住宅が建て込んでおり結局立ち退きが必要で、橋付近がかなりの急カーブになるため速度が出せない等の問題があります。
県道34号線沿いに復帰後は、県道の東側に沿った形で海岸線まで南下します。ここも幾分は立ち退きが生じます。
(県道34号線・鎮守の森公園付近 道幅に余裕はある 2017年7月28日)
海岸線に突き当たる愛宕病院分院付近で、東に直角に方向を変え、今度は県道14号線(花海道)に沿って進みます。
(愛宕病院分院付近 この付近で直角に方向を変える 2017年7月28日)
問題は、現在の花海道は弄らず、北側に沿う松林や墓地などがある部分に敷設するか、歩道も両側にあり停車帯もあるなど幅員に余裕のある花海道を狭めて用地買収を最小限にして敷設するかどうかです。
前者は、花海道の開放的な景観への影響は最小限で済みますが、用地買収費はどうしても嵩んでしまいますし、松林を伐採してしまうため環境面でも問題が出てきます。後者は、用地買収費は最小限ですが、狭くなった道路のすぐ脇に高架橋ができるため、景観面で圧迫感が出てしまいます。議論の余地があります。
電車延伸後に、新たに花海道を「よさこい祭り」の会場とするなら、概ね前者の方が良いとは思いますが、地点によってケースバイケースでしょう。
【2018年6月23日追記】
新線部分は法律上の問題もあり、全線高架という考えでしたが、現在では単線となる「雪蹊寺(長浜)」以南は、桂浜駅部分はを除いて、踏切設置の問題はありますが、建設費削減、景観上の配慮から地上敷設で十分と考えに改めました。
地上敷設の場合は、花海道の停車帯を削ったり歩道を少し狭めて単線分のスペースを捻出しても景観上の問題は出ず、用地買収はほとんど生じないと考えています。
(県道14号線・花海道 幅員に余裕はある 2017年7月28日)
(車線と歩道の間にもスペースがあり単線分の捻出は容易だが 2017年7月28日)
桂浜へ至る直前は、浦戸小学校のすぐ南側からトンネルを掘り、龍馬記念館や桂浜荘の真下付近を抜け、最後は現在の桂浜駐車場に高架で設けた「桂浜駅」へ至ります。
(桂浜近辺のルート案)
新線区間は全線高架による敷設一択!【追記により一部修正】
どのような形で敷設するかの問題ですが、新線部分は「高架橋による敷設」しか事実上選択肢はありません。専用軌道で敷設するなら法律上、踏切は余程の例外でもない限り設置できないので、住宅街を貫く県道34号線の半分を流用して地上に鉄道線として建設することは不可能です。なお、地下での敷設は論外です。
海岸線の花海道沿いは、住宅が建て込んでおらず、コスト面を考えると地上敷設でもよさそうなものですが、交差する道路が多い上、花海道に踏切待ちの滞留スペースが十分にとれないなどの問題があり、地上で踏切設置の許可が降りるのはかなり困難だと思われます。それに高架橋の方が、津波避難施設としても機能でき防災対策を兼ねることができるため、やはり高架での敷設がベストです。
【2018年6月23日追記】「雪蹊寺(長浜)」以南は地上敷設で十分!
ニュータウンが発達し複線による敷設を考えている「雪蹊寺(長浜)」以北は、高架による敷設しか考えられませんが、「雪蹊寺(長浜)」以南は、一気にローカルな雰囲気になり、単線による敷設で運行本数も減る想定(日中20分間隔)であり、予定ルートでは主要道路と交差もしないので、全部高架で敷設するのはいくらなんでもバカバカしいと思うようになりました。
地上敷設であれば、当然ながら建設費は大幅に縮減できますし、花海道の開放的な景観が犠牲になることもありません。さらに、地上区間があることで、より親しみが持てる電車になります。防災施設としての機能はなくなりますが、幸いすぐ北側に高台がありますし、愛宕病院分院など避難可能な施設も沿線にあります。
「雪蹊寺(長浜)」を過ぎて川を渡ったら、最後の桂浜駅を除いて地上敷設で問題ないと現在は考えています。
最大の問題は、やはり国土交通省の特認を得ることです。極めて大きな壁になるでしょうが、JR可部線では復活区間で踏切が認められており、ごめん・なはり線も新線ながら踏切が存在しいることを考慮すれば、不可能ではないと考えています。大体、都市部でも田舎でもぞれぞれの地域事情を考慮せずに踏切一切ダメという法律の方がバカげています。アメリカの新設LRTなんか郊外区間でも普通に踏切ありますぜ。
一応、地上で敷設可能な裏技(?)はあります。「桟橋車庫前」の交差点から「瀬戸西町三丁目」付近までなら、路面電車として併用軌道として敷設するなら地上でもできないことはありません。実際に、富山ライトレールでは新規の路面区間が登場していますし、宇都宮のLRTでもかなりの部分が路面電車として計画されています。建設コストは確かに安くなるでしょう。
しかし今度は、速度が低く制限される上、交通信号にも影響されるため所要時間がかなり伸びてしまいます。桂浜までの距離を考えたらこれでは話になりません。高知駅から桟橋車庫前までの約3kmを、すでに15分近く路面電車として走っていることを考えたら、それより先は広島電鉄宮島線のように速度を出せる鉄道線として通すのがベストです。現行のバスより時間短縮できることは、この構想の要でもあります。
先ほども述べたように、「瀬戸西町三丁目」付近(旧道とバイパスが別れる三叉路があるところ)まで県道は旧宇津野トンネル部分を除いて四車線に拡幅されています。その半分を流用し高架で敷設することになるかと考えられます。二本ある宇津野トンネルは狭い東側の旧トンネルを流用する形になるため、東側の南行き二車線を潰して敷設となります。
道路が削られ対面通行の二車線になってしまうため、渋滞の悪化が懸念されるかもしれませんが、そこはいかにクルマ(マイカー)から鉄道へ、通勤通学、通院、観光、買い物等の交通需要をシフトできるかにかっています。場合によっては、郵便や宅配便などの荷物輸送も考えられます。そもそも、道路一車線と線路一本では、線路の方が桁違いに高い輸送力を持っています。
さらに言えば、県道34号線の西側にも高知競馬場の側を通り海岸線まで抜ける平行道路も出来ていますので、車線を減らすことに大きな問題はないと考えています。そもそも前提として、マイカーを減らすことも目的とした公共交通整備であるため、車線を削ってしかるべきです。
このように全線高架にせざるを得ず、建設コストはかかりますが、ほぼ全線高架のごめん・なはり線でも意外なほど建設費は安く済んでおり、決して非現実的な金額にはならないと考えられます。
ごめん・なはり線同様に高架だからこそ、地上の道路からは見えなかった浦戸湾や漁港の風景が車窓に広がるようになりますし、花海道沿いからの太平洋の眺望もより素晴らしくなります。
【2018年6月23日追記】
花海道沿いの区間は、江ノ電の鎌倉高校前付近と同じ感じになり地上敷設であっても十分に眺望は素晴らしいです。むしろ地上の方が、花海道の歩道に植えられている色とりどりの花も見れてより車窓が楽しくなるでしょう。江ノ電同様に親しみのもてる電車になります。
流用予定の旧宇津野トンネルは複線分に拡幅が必要
先ほど述べたように、現在の路線バスでも運行上の拠点でありニュータウンの発達して輸送量が多いと思われる、中心街から「雪蹊寺(長浜)」までは、複線で敷設と考えていますが、流用予定の古い方の宇津野トンネルが最もネックになってきます。
昭和26年(1951年)に完成したこのトンネルは狭く、現在も県道の南行きはトンネル部分だけは一車線のままとなっています。一応、拡幅等改良の計画はあるそうです。
(旧宇津野トンネル入口[はりまや橋側] 2017年7月28日)
(旧宇津野トンネル内部 2017年7月28日)
(新宇津野トンネル入口[横浜側] 片側二車線確保されている 2017年10月10日)
トンネル拡幅は大変だろうし、日中10分間隔、ラッシュ時6~7分間隔程度なら、単線区間を1分程度で走り抜けられるだろうから、理論上は問題なく、この箇所は単線で妥協でも仕方ないと思っていました。同様に、道が狭い「瀬戸西町三丁目」~「雪蹊寺(長浜)」間も建設費縮減のために、単線で妥協するという考えでした。
しかし、【その2・需要予測編】を書くにあたって、桂浜の来場者数のデータを調べてみたら、ゴールデンウイークなどのピーク時は、桂浜発着を10分間隔にしても、桂浜への観光客だけで中心街~桂浜間が満員になる可能性が高いことが判明しました。その場合、沿線住民に迷惑がかからないよう臨時で増発し、中心街から「雪蹊寺(長浜)」まで5分間隔での運行が必要になりそうです。よさこい祭り他のイベントを桂浜等でも開催する場合も同様です。
そうすると、トンネル部分や「瀬戸西町三丁目」~「雪蹊寺(長浜)」間にある単線区間がネックとなってきます。多客で遅れも予想されるので、一列車が遅れてしまうとなかなかダイヤが回復しません。単線では明らかにまずいです。
最初は単線で妥協して、運行してみてやはり複線に変更したいとなった場合、トンネル拡幅工事は運行しながらになるので、余計に工期と費用が嵩んでしまいます。
ということで、旧宇津野トンネルは鉄道敷設にあたって複線分(+歩道)に拡幅が必要になりそうです。
高架区間は「桟橋通四丁目」から
先ほど、新線区間は全線高架一択(前述したように単線区間は地上敷設という考えに改めています)しかないと述べましたが、その高架区間が始まる場所が問題になります。
順当に考えれば、既存の桟橋線に「桟橋車庫前」から接続(既存の「桟橋車庫前」~「桟橋通五丁目」は廃止になるだろう)するので、「桟橋車庫前」の交差点を過ぎてから高架に上げることになります。
しかしこの交差点、極めてやっかいな交差点です。
(「桟橋車庫前」交差点 2017年7月25日)
グーグルの航空写真を見れば一目瞭然です。
変則五叉路というかなりの変態(!)交差点であります。そのためか、結構信号待ちが長いように思います。
ここを路面で通してしまうと、優先信号を導入したとしても電車も信号待ちの時間が長くなるばかりか、クルマとの接触事故が多発する懸念があります。
明らかにこの交差点は、高架でパスした方がよさそうです。一つ「はりまや橋」方の「桟橋通四丁目」を過ぎてから高架にするのがよいでしょう。
だが、またもや問題があります。今度は、桟橋車庫への出入りをどうするかという問題が出てきます。引き込み線のところまで路面のままだと、距離的に「桟橋車庫前」や交差点部分を高架にするのは不可能ですし、「桟橋通四丁目」(交差点過ぎた側に南行きホームを設置)過ぎた直後に高架へ上がり始めた場合、今度は引込み線が設置できません。いずれにしても問題です。
それとも、桟橋車庫を完全廃止して移転する? この構想では、災害対策と大型LRV対応の側面から一部車庫機能を瀬戸に移転することは考えていますが、すべてを一度に移転するまでの財源確保は困難なので、ここではそれはない前提としておきます。
解決策は、下図のように高架への接続部付近から別途地上で車庫への引込み線を設置する方法が考えられます。緑が地上区間で赤が高架区間です。
一部区間で、3線となりますが、桟橋通りの幅員は広く歩道の幅も余裕があります。一部歩道を狭くするなどすれば、3m程度の軌道敷部分のスペースは捻出はできるでしょう。
【その5・〔続〕地上設備編】へ続く
地上設備についてもう少し書きたいことはありますが、長くなったためもう一記事、地上設備編となります。
桂浜へ電車(LRT)を走らせよう!【その5・〔続〕地上設備編】
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桂浜へ電車(LRT)を走らせよう!【その3・目的編】
【その2・需要予測編】から続きます。
【その3】こそ地上設備案について書こうと思っていましたが、改めて桂浜へ電車を走らせる目的は何なのか、何を目指しているのかということを具体的に書こうと思います。
[目的1] 脱クルマ社会へ向けた公共交通整備の第一弾!
これが最大の目的です。
少子高齢化、人口減少が続き70万人を切ろうとしている高知県。一極集中の高知市も近年は減少に転じています。このままでは、高知県は縮小および衰退の一途を辿っていくことが容易に予想できます。
近年、地域再生、地方創生と叫ばれていますが、現実には歯止めはかかっていません。地方が衰退、疲弊しているのには様々な要因がありますが、行き過ぎたクルマ依存社会というのも間違いなくその一因でしょう。
クルマしか選択肢がない状態って、高額な家計負担を強いられる上に、言うほど便利でも快適でもないのですよね。交通手段としても都市構造としてもクルマ社会は効率が悪すぎ、ビジネス面でも不利です。
現在の高知の公共交通は、路面電車が便利などいい面もありますが、全体的には路線バスの水準が低すぎて、かなり不便です。高知市内であってもクルマに依存せざるを得なくなっています。このまま使えない公共交通を放置し続けたら高知は衰退の一途を辿ると確信しています。
人口減少を食い止め、むしろ移住者や仕事を増やし回復に持っていくためにも、地方都市をより住みやすく魅力のあるものにしていかなければなりません。それには、便利で快適な公共交通をきちんと整備してマイカーを持たない選択肢を作っていくことが求められます。基幹交通はバスでごまかすのではなく、快適性が高く安定輸送が可能な軌道系交通の整備が必要です。
だけど、高知市都市圏で一度には整備できません。第一弾として、かなりの人口集積がありながらも公共交通が貧弱な高知市南部地域から、後述の観光輸送改善も合わせて公共交通の利便性向上を図ってはと考えています。
クルマに依存しない地方都市を高知市南部エリアから目指していきましょう!
[目的2]桂浜へのアクセス手段改善による渋滞対策と閑散期の底上げ
観光シーズンになると驚くほどの観光客が桂浜へ来ていますが、駐車場のキャパシティの問題、周辺道路の構造もあって、かなり渋滞します。酷い場合は、駐車場に入るのに1時間以上かかってしまうこともあるようです。
(My遊バス車内より撮影 2017年7月16日)
しかし、駐車場は広いとは言えず拡張も困難です。周辺道路もこれ以上改良のしようがありません。
(2017年10月8日)
せっかく遠くから高知へ観光に来たのに、渋滞でマイカーの中で1時間つぶれるのは勿体ないですよね。その分滞在時間減らしたり、回れる箇所が減るので高知県全体にとっても機会損失でもありますし、イメージダウンに繋がってしまいます。
これだけ見ても、電車を伸ばした方が絶対いいです。それに決して広くない土地のかなりの部分を駐車場に割かれているのは極めてもったいないことです。桂浜へは、途中でパークアンドライドしてもらって、なるべく電車やバスで来てもらうようにして、乗用車用駐車場は削減&大幅値上げが良いと考えています。
観光においても、マイカーを制限するところはしっかり制限して、クルマに依存し過ぎは是正するのが望ましいです。
一方、冬の平日など閑散期になると、うってかわってガラガラで寂れた観光地の風情です。実のところ、マイカーやバイク以外の手段で高知市へ来た観光客はそれほど桂浜へ行ってないようです。日曜市やひろめ市場で話した観光客も「交通手段がよく分からないので桂浜へ行ってない」って言っていたくらいです。
(閑散期の土産物屋エリア 2018年1月30日)
「桂浜公園整備基本計画」(資料編)には、以下の記述があり「閑散期の底上げ」に言及されています。
(「桂浜公園整備基本計画」(資料編)より転載)
それなら、電車を引いてアクセスしやすくした上、飲食店等の魅力を上げ、観光客だけでなく地元民にも来てもらえる場所にするのが一番ではないですか!
上の記述には、「駐車場のキャパの問題で繁忙期のこれ以上の集客は困難である」と書かれていますが、これも輸送力のある電車を伸ばすことで、さらなる伸びが期待できます。
繁忙期も閑散期も電車伸ばすことによって、桂浜はさらによくなるでしょう。
[目的3] 桂浜の魅力向上、観光客がより楽しめる場所に!
先ほども写真載せましたが、現在の駐車場や土産物屋エリアはこんな状態です。
(2017年8月6日)
(2017年8月6日)
思いっきり昭和の観光地ですね。土産物屋も飲食店も昔からやり方は変わっておらず、お世辞にも魅力があるとは言えない状態です。せっかく観光客が来てるのに、これではお金落とさないよですよね…。
こういう問題もあって、高知市では桂浜土産物屋エリアの再開発を計画していますが、そのイメージ図は…
(「桂浜公園整備基本計画」より転載)
これアカンでしょ!! アスファルトで塗り固めた広大な駐車場と、もともとの地形を隠すように配置した施設群…。これでは、ただの道の駅…、いやロードサイド店と言っても過言ではないです。ありきたりな感じで桂浜らしさなど全然感じられません。
施設の魅力向上は必要ですが、こんなことするなら現施設のリニューアルに留めておいた方が、はるかにマシです。やめて欲しい、こんな計画!
【2018年4月8日追記】
「桂浜公園整備基本計画」は、一旦なしになったとの情報が入りました。現施設のリニューアルで進めるそうです。
でも、分からんでもないです。マイカーでのアクセスを前提として構想を考えると、確かにこうなってしまいます。どうしても広大な駐車場が必要ですから。それほど広くないのに関わらず、駐車場という無機質な空間に多大な面積を割かれてしまうのは、極めてもったいないですが、クルマが集まる以上そうせざるを得ません。
要するに、マイカー中心のアクセス前提でいくら構想を練っても限界と言うことでしょう。やはり、電車を伸ばしてそれとリンクさせる形で桂浜のリニューアルを図っていくのがベストです。
電車だとお酒が飲めます!夜も楽しめる場所にできます!大きなヒントです。
2018年4月には、龍馬記念館の新館もオープンします。それも踏まえて、桂浜エリアがより魅力的になるたに、施設単体だけでなく、公共交通の活性化と結びつけて考えていってほしいものです。
[目的4] 高知をより面白くしたい!もっと観光客を呼びこもう!
桂浜へ電車(LRT)を走らせる構想は、単なる沿線住民の利便性向上、観光アクセスの改善、都市交通におけるクルマ依存軽減などだけでなく、【その1・概要編】でも述べたように、色々とエンターテイメント性を持っています。
浦戸湾や太平洋が広がる車窓は素晴らしく、これだけで観光客を惹きつける路線になります。また新型電車だけでなく、敢えて600形をはじめとするとさでん交通の在来車両や他社の中古車両を改造して定期運用で走らせ、維新号、外国電車、おきゃく電車なども臨時・団体で走らせれば、より面白くなります。
(花海道から太平洋を望む 2018年1月30日)
電車そのものも江ノ電に引けをとらない観光資源になり得ます。
そして、桂浜や花海道をよさこい祭りの会場にできます!よさこいがより面白くなります!よさこいの経済効果はさらに伸びるでしょう。
「土佐のおきゃく」も中心市街地の分身として、桂浜でも開催可能になりますし、その他色々なイベントが開けるようになるでしょう。
より高知が面白くなって、さらなる観光客を惹きつけ、地域経済の活性化につながればと願っています。
[目的5] 防災対策としても有効
意外かもしれませんが、防災対策も兼ねることができます。
新線部分は全線高架となるため、特に花海道沿いの海岸部では、ところどころに非常階段を付けることによって、津波避難施設として機能できます。ここの地盤はもともと標高10mくらいとかなり高いので、それよりさらに高い高架橋は「線上の津波避難タワー」になります。最悪、高架部への浸水も考えられますが更なる高台へ避難する上での時間稼ぎになります。
ちなみに非常階段の踊り場は、平常時においては撮影スポットして活用できます。
さらに、津波の浸水や液状化の被害が予想される桟橋車庫の移転も検討できるようになります。ちょうど、長浜のバスターミナル付近に広大な駐車場を備える遊技場があり、広さも車庫と整備工場を設置する上で十分あり、そこに高架で移転できそうです。(高架なら遊技場も高架下の1Fで引き続き営業できますし…)
【その4・地上設備編】へ続く
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