もう道路整備は程々でいい。貧弱すぎる鉄道の改良に予算を回すべし。
高知県でも、道路の開通が相次いでいます。
どんどん便利になっていく道路交通
今年3月5日には、国道33号・高知西バイパスが天神IC〜枝川IC間が延伸され、そして4月23日には、高知東部自動車道・高知南国道路が高知龍馬空港まで開通する予定です。
(高知新聞・2016年2月19日朝刊記事)
(高知新聞・2016年3月5日夕刊記事)
2002年に、高知自動車道が須崎まで延伸されてからは、大規模な開通や延伸は一時ストップしていましたが(既存区間の4車線化などの改良はされていましたが)、2010年代に入ってからはどんどん開通しています。
2011年3月5日 高知自動車道・須崎西IC-中土佐IC
2011年3月26日 南国安芸道路・香南やすIC-芸西西IC
2012年12月9日 高知自動車道・中土佐IC-四万十町中央IC
2012年12月22日 高知西バイパス・鎌田IC-天神IC
2013年2月17日 南国安芸道路・香南かがみIC-香南やすIC
2014年3月9日 南国安芸道路・香南のいちIC-香南かがみIC
2015年3月22日 高知南国道路・高知南IC-なんこく南IC
2016年3月9日 高知西バイパス・天神IC-枝川IC
今後も、2020年度に高知南国道路の高知JCT-高知南IC間の開通、2021年度に南国安芸道路の安芸までの延伸、国道56号の片坂バイパス(窪川佐賀道路)の開通と、新規開通が続々と予定されています。
このように、道路はどんどん便利になっています。
特に、須崎以南は見違えるほど道路環境がよくなりました。国道56号の須崎以南は、久礼坂をはじめとするきついカーブの続く難所区間で、時間面でも安全面でも防災面でも課題ありまくりの区間でした。
この区間が高速道路の開通で劇的に改善されたことは、本当に意義のあることだと思います。以前のぼくでしたら「高速道路など無駄だ!やめろ!」って思っていたのですが、あの区間を実際に自分で運転してからは「さすがに、改良しないとマズいよな…」って考えを改めるに至ったほどです。
地元の自治体や産業・観光の関係者、そして住民の方々にとって、道路の開通はまさしく悲願だったというのがよく分かります。
幡多地方のカーブだらけの国道(国道321号の中村〜土佐清水間など特に改良が必要だと思います)や山間部の狭隘区間をはじめとして、まだまだ高知県には改良の必要な道路があるのは間違いありません。
いくら道路が便利になっても、高価なクルマを自前で用意して自分で運転しなければならないことには変わりがない
でも、一方でこう思うのですよね。
道路は便利になって、所要時間は短縮し、運転もしやすくなる。しかし、結局は自前で高価なマイカーを用意して、自分で運転して走らせることを前提としていることには変わりがないし、交通事故のリスクも依然抱えたまま
上の記事で詳しく述べていますが、ただでさえ高くはない地方在住者の所得の多くの部分が、クルマ関連の費用で食い潰されてしまっていること、交通事故を起こしてしまうリスクを常に抱えているという二点で、行き過ぎた地方のクルマ社会は問題ありすぎだと考えています。
通勤や行楽でのマイカー移動は、所要時間が短縮される分、運転はいくぶん楽にはなりますが、結局は行路のすべてを自分で運転していかなければなりません。長距離になると出かけるのにも気合いがいります。昨今話題になっている自動運転も、完全自動運転ともなるといつ実現できるかどうか分かりません。
自分で運転する以上、事故のリスクも当然抱えたままです。高速道路は一般道より安全ではありますが、スピードが出ているだけに、ひとたび事故が起これば一般道以上に悲惨なことになります。まともな中央分離帯もないのに、あの速度で対面通行。正直なところ恐怖ですよ…。
「地方はクルマ社会、マイカーの所有は大前提」っていう発想に染まっているため、なかなか気づきませんが、いくら道路が便利になってもクルマに依存した地方の構造は何も変わりないばかりか、むしろ増長すらしてしまいます。
結局のところ、マイカーという超高額商品を購入して高い維持費を払い、事故を起こすリスクを抱えながら、自分で運転して走らせなければいけないことに何ら変わりはありません。
少なくとも高知県では、もう道路ばかり整備し続けても、暮らしや産業が劇的によくなるとは到底思えません。
観光面でもマイカー利用でない人はなかなか取り込めません。自分で運転して回るしかないなんて、観光立県として不親切すぎます。せっかく、外国人観光客も増えているのに取り込むチャンスを逃してしまいます。
物流や防災のこともあるので「道路は何でもかんでも無駄!全部やめろ!」と言うつもりは全くありませんが、高速道路ネットワークがそこそこ充実した現在、道路整備はもうスローダウンしてもいいのではないでしょうか。
貧弱すぎる鉄道の改良に予算を回すべし!
一方で、高知県の公共交通、特に鉄道のインフラは極めて貧弱です。
「見捨てられた存在」と言えるほど、近代化が遅れています。路線バスも貧弱極まりないのですが、道路は十分整備されているので、どちらかと言うとソフト面の問題ですね。
JR土讃線は、高知市近郊ですら単線で一部を除いて電化すらされていません。全体的に線形は悪く、これ以上のスピードアップも限界があります。高度成長期の無煙化(気動車の導入)、1990年代の振り子気動車の投入によるスピードアップと、歴史上二度のブレイクスルーを果たしていますが、広域交通としても都市圏交通としても、今の設備のままではこれ以上の発展は難しいでしょう。
とさでん交通(旧土佐電鉄)の路面電車は、さらに貧弱です。何しろ100年以上の歴史の中でブレイクスルーは、戦後〜高度成長期にかけてのボギー車の大量投入だけという有様。その後、車両の更新はほとんど進まず、地上設備も基本的に明治時代のままで、半世紀前から本質的に何も変わっていません。いや、直通運転していた安芸線を失った分、退化すらしています。
(2004年5月2日・はりまや橋にて)
乗客減に喘ぎながら、老朽化した旧型車両をだましだまし使い続け、なんとか細々と生きながらえているという状態です。市街地交通としては便利で本数も多くそれなりに利用されていますが、郊外部で1両編成の旧型電車がノロノロ行き交う姿を見ると、やっぱり時代に取り残された感は否めません。
そして、高知の重要な玄関口の一つである空港へ鉄道が乗り入れていないなど、既存の路線だけではネットワークが十分とは言い難いです。
クルマを持たなくても快適に暮らせる地方社会を実現するためにも、外国人観光客などマイカーで来ない人々への配慮という面でも、移住者の獲得や企業の移転を促すなどして(特に本社機能)人口減を食い止めむしろ増加に仕向けるためにも(個人的に高知県は120万人くらいの人口があっていいと思っています)、貧弱すぎる鉄道の改良に予算を回す方が良いと考えています。
ここまで読まれて、「財源はどうするの?」、「採算はとれるの?」、「そもそも利用されるの?」、「それこそ無駄!」などと思われるかもしれません。それらについても、一度には書けないので、順番に書いていきますよ。
もはや、不便でまともに使えない公共交通を今後も放置し続けたら、高知は衰退の一途を辿っていくと確信するにまで至っています!
山間部や漁村以外で、公共交通をまともに整備せず、クルマがないと生活が不便極まりないという状態を放置し続ける地方は、衰退の一途を辿っていくと思う。そんな非効率で不安定な交通手段しかない地方都市に、人や企業が集まりますか?という話し。 https://t.co/EHC7wyWrrb
— 脱クルマで地方は豊かになる!@高知家 (@motorization) 2016年2月28日