高知の公共交通再生プロジェクト【その5】新運賃体系案・後編
【その4】から続きます。
前記事では新運賃体系案の中の「距離比例運賃システム」について述べましたが、今回はそれ以外の新運賃体系案について書いていきます。
大人同伴の子供運賃は無料に!
コロナ渦前より高知の公共交通全般、土休日の利用は芳しくなく、家族連れで乗っている姿はほとんど見かけません。休日の夕方の高知駅、通学定期持っていると思われる高校生の姿が目立ち、子供連れの姿を見かけるのは稀です。道路にはクルマが溢れて渋滞する一方、公共交通は閑古鳥…。大変もったいないと思います。
(イオンモール近辺の渋滞 2016年12月11日[日])
しかし、現行の制度ではそもそも運賃は高い上に、乗り換えたらさらに割高になります。夫婦で乗って二人分の運賃に加え、子供運賃は半額になると言っても子供二人連れの場合、合計で大人三人分の運賃が必要になります。
マイカーでしたら、1人で乗っても4人で乗ってもかかる費用は基本的に同じで(多少燃費は悪くなりますが)、すでにマイカー持っているならそれを最大限活用するのが経済的に合理性があるのは言うまでもありません。本数も少ないならなおさらです。よって、公共交通が利用されないのは当たり前と言えます。
ですが、マイカー利用抑制による渋滞緩和および公共交通自体も増収の観点から、家族連れにも公共交通を利用できるならできるだけ利用してもらった方がいいのは言うまでもありません。
子育て支援の観点から、子育て世代においても家計負担が大きいマイカーを持たない(あるいは一家の台数を減らす)で済む環境づくりのためにも「家族連れでも気軽に乗れる公共交通」の実現が求められます。
【その2】でも述べましたが、家族連れで利用しやすいよう、思い切って大人同伴の子供運賃は無料化することを提案します。それも小学生までではなく義務教育が終わる中学生までを対象にすることを考えています。地方の公共交通復権にはそれくらいの思い切った施策が必要です。
いくら1km10円の距離比例であっても、夫婦で利用したら1km20円となりマイカーのガソリン代に比べて不利さもあるので、積極的に乗ってもらうには同伴の子供は無料にせざるを得ないという側面もあります。
この大人同伴の子供運賃無料化は、県民(住民)のみならず観光等の来訪者も対象にするのが良いと考えています。子供運賃が無料であれば、観光客も公共交通を利用しやすくなるのは言うまでもありません。
同伴の子供無料化は10年くらい前から思いついていて「公共交通利用促進策としてなぜどこもやらないのだろう?」と思っていましたが、つい最近、小田急電鉄が無料ではないもののICカード利用に限って距離問わず小児運賃50円の施策を導入することが発表されました。
「ついに出たか!!」という感じでしたね。
家族連れで利用する人が増えれば、結果的にむしろ増収になるでしょうし、長期的にも沿線価値の向上につながるよい施策です。「家族連れで利用しやすい公共交通」は時代の流れに合っています。地方復権のためにも、明日にでも導入してよいくらいです。
子供運賃は廃止(子供のみでの利用時に適用)
上で述べたように、大人同伴の子供運賃は無料にするのが前提ですので、この子供運賃を廃止する案は、子供単独もしくは子供同士で利用した場合の話になります。
「子供半額を廃止するのはサービス低下じゃないの!」と思われるかもしれませんが、前述のように大人同伴の場合は無料化すること、住民は1kmあたり10円の距離比例運賃で十分安価な運賃設定になっていること、小児専用ICカード発行の手間(中学生になる時に大人用に交換の必要あり)を省いて合理化する観点から、新運賃体系の移行の際に子供運賃は思い切って廃止がよいと考えています。
定期券からポイント還元へ
前記事でも述べましたが、定期券はかなり前時代的な仕組みです。窓口で定期券を販売するコストもバカになりません。
県民(住民)利用については、1kmあたり10円の距離比例運賃によりJR四国の通勤定期相当の運賃になることを考慮して、システムの簡素化を目的に定期券は潔く廃止にするのがよいと考えています。
以下の表のように、25日往復利用の合計運賃とJR四国の1ヶ月通勤定期の値段を比べるとかなり近い値段になっていることがお分かりいただけるかと思います。JR線こそほぼ同額ですが、とさでん交通の路面電車・路線バスや土佐くろしお鉄道線を利用して通勤している場合は大幅な値下げになります。
だが、定期券廃止により事実上値上げになる場合も出てきます。
当然ながら通学定期も廃止になるため、高校生であっても支払う運賃は通勤利用の社会人と同額になります。
上の表をご覧のとおり、JR線における高校生の通学定期券は破格と言える安さです。通学距離が増えるほど、通勤定期との差は大きなものになっています。「よくこの安い値段を維持しているな」と感心してしまうくらいです。
つまり、JR線のみ利用して通学している高校生の場合は、新運賃体系導入により通勤定期相当まで値上げになってしまいます。
これに関しては「むしろ今までが安すぎました!ゴメンナサイ!」といか言いようがないです。JR線のみの場合は値上げになりますが、土佐くろしお鉄道線やとさでん交通が絡む場合は、むしろ値下げとなります。そのことを考慮してもこればかりは仕方ないと思います。
路面電車の定期券を追加で買うと高いため、高知駅駐輪場に置いている自転車で各学校へ向かう高校生の大群は、毎朝の風物詩になっていますが、これも距離比例式運賃により運賃体系が共通化されるので、気兼ねなくJR線から路面電車に乗り換えて通学できるようになります。
「安いJR通学定期券は既得権益なので卒業まで購入権を残すべき」という意見もあるかと思いますが、そこだけ残したらそれはそれで不公平になるので、「ご了承ください」とご理解を求めるのがベターに思います。
さて、定期券に替わる実質の値引き方式として、ICカードの特性を活かして月間利用金額に応じたポイント還元の導入を提案します(県民のみ)。これなら、チェーン店勤務で勤務地が変わる場合などにも対応できてより現代のニーズに合っています。
付与されたポイントは、ICカード残高へのチャージの他、「高知家ポイント」として、県内のお店等で共通利用できるものを考えています。下の表に還元率の一例として掲載しますが、原油価格の変動、災害復旧その他の状況を考慮して適宜改定を想定しています。
土休日は常時10%ポイント還元!(県民のみ)
前項の月間利用金額に応じたポイント還元とは別に、県民については土休日利用分について常時10%のポイント還元を考えています。
大人同伴の子供運賃無料と同様に家族連れでの利用促進、それ以外の友人同士等のグループでの行楽についても公共交通利用を促進(=マイカー利用抑制)する趣旨であります。
乗り放題パス(QRコード式)
いくら距離比例で安価に利用できると言っても、距離による逓減や往復割引は設定されていないため長距離利用になるほど、むしろ割高に感じる場合もあります。特に、観光客等における「1km=15円(繁忙期20円)」の設定の場合、長距離利用の割高感は顕著になり、強いては公共交通利用の上でのバリアになる懸念もあるくらいです。
その解決策として、定額で利用できる乗り放題パスの設定も考えています。
キャッシュレス推進・現金払い原則廃止へ!
これまでの記述からもお分かりかと思われますが、新運賃体系案はICカードもしくはQRコードによる運賃支払いを前提にしています。そもそも、距離比例式の運賃は現金では対応不可です。
現金払いは、現金管理コストの削減、不正防止等の観点から思い切って最終的には廃止すべきと考えます。ICカードへのチャージも、有人窓口を除きクレジットカードもしくはキャッシュカードから直接チャージ可能とし、「最後の手段」として車内で乗務員に申し出て現金チャージする場合は手数料を徴収(手数料分を引いた額をチャージ)するくらいの方がいいと思っています。
【その6】へ続く
【その6】新運賃体系案・追記