地方の公共交通を立て直す!@高知家

地方の車社会、公共交通、自転車活用をはじめとする交通論・都市計画論、その他いろいろ

高知の公共交通再生プロジェクト【その3】公共交通連合について

【その2】から続きます。

 

高知県内の公共交通を事実上一つに!

 

まず、公共交通連合とは何かについて簡単に説明します。

 

すでに、ドイツの各都市はじめ欧米では導入実績があるシステムで、一般的に「運輸連合」と呼ばれていますが、あくまでも人の移動に関することがメインであるため、広く貨物輸送も含む”運輸”という用語を使うよりは、”公共交通”という用語の方が適切であると考えているので、当ブログでは「公共交通連合」と呼ぶことにします。

 

現在の県内公共交通は、JR線と土佐くろしお鉄道線での相互直通運転の実施、共通利用可能なフリーきっぷの発売、鉄道とバスのダイヤ接続等、一部では事業者同士で連携が図られていますが、ほとんどの場合、それぞれの事業者ごとに運賃設定や情報案内等が行われており、ダイヤの調整も十分とは言い難いのが現状です。

 

例えば、土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線の終着駅である奈半利駅到着時、室戸方面へ接続する路線として高知東部交通の路線バスの案内は特に行われていません。ワンマン運転ゆえ運転士に発車時刻までアナウンスを求めるのは酷ですが、せめて自動放送の設定で路線バスがある旨くらいは案内できると思うのですが・・・。

 

結果、複数の事業者や路線をまたいで利用するとそのたびに初乗り運賃がかかり、トータルでは高額になり、不慣れな者にとっては分かりづらいものになっています。地元の人ですら、普段乗らない路線については分かりづらく、いざ利用するときは不安に思うのが実情であり、観光客等の来訪者にとってはJR線等を除いては利用すること自体非常にハードルが高いものになっていると思われます。

 

事業者ごとにバラバラの運営、今ではそれが当然という認識ですが、それこそが地方の公共交通が低迷している根本的な要因になっていると考えられます。

 

現在の公共交通はシステムが古すぎ、前時代的すぎるのが実情です!

 

この問題を解決し、事業者間の垣根を越えて地域の公共交通をより使いやすくする仕組みが「公共交通連合」です。地域内の交通事業者や地方公共団体が連合体を形成して、地域内の公共交通を一元的に管理・運営する組織のことです。

 

具体的に以下のような事柄が実現可能になります。

 

・統一された運賃体系

・連携のとれた運行ダイヤ、路線網

・一元化された情報案内サービス

 

事実上、高知県内の公共交通は一つの事業体になります!

 

鉄道ファン等はともかくとして一般の利用者にとっては、各路線の運営主体がどこであるか全く気にする必要がなくなります。現在の状態を「公共交通2.x」とすると「公共交通3.x」にバージョンアップするようなものです。

 

さらに詳しくは、以下のページ等をご覧ください。

 

www.t-lrt.com

ja.wikipedia.org

 

組織体系案

 

県内の公共交通事業者、運輸局、地方公共団体高知県、各市町村)、郵便局他の運送業者(過疎地路線において貨客混載を検討しているため)で組織した公益法人として設立し、全国健康保険協会や健康組合を参考にした組織体系を考えています。

 

www.kyoukaikenpo.or.jp

 

まず、役員(理事長、理事、監事)を配置、そして組合会を設置すると形態とし人数や選定方法は今後議論の余地はありますが、組合会においては事業者、行政、利用者、学識経験者で同数ずつ配置とするのが望ましいでしょう。

 

業務の決定は、原則として理事会にて理事の過半数により決定とし、規約の変更、収入支出の予算、事業報告および決算等の重要な事項については組合会の議決を必要とし、安易な運営とならない仕組みが求められます。

 

業務内容案

 

先ほども述べたように、公共交通連合における業務の三本柱は、運賃体系の統一ダイヤの調整情報発信ですが、具体的には以下のようなものを考えています。

・運賃の徴収および各事業者への分配

ICカードシステム、付随するポイントシステムの運営管理

ICカード利用、ポイント利用に基づく顧客分析、ビッグデータの活用等

 (分析結果は有料にて販売)

・運行ダイヤ、路線網の調整

・県内公共交通統一ホームページ、スマホアプリの作成および管理

 (広告掲載により収入を確保するのが望ましい)

・県内公共交通時刻表の作成および出版(有料にて販売)

・その他県内公共交通にかかわる情報発信(パンフレット、SNSYouTube等)

・共同マーケティングおよび各種調査

・労働保険事務組合(小規模事業者を対象)

 

情報公開の徹底

 

公共交通連合の組織は、信頼性の向上および不正防止の観点から徹底的に透明性を確保した運営にすべきと考えています。

 

各路線の運賃収入および利用実績、事業者への配分額、他各種収入、予算や決算、理事会および組合会の議事録等は、原則としてすべてホームページにて公開し、特に理事会および組合会の様子は動画サイトでも公開とするのがよいでしょう。

 

【その4】へ続く

 

【その4】新運賃案・前編

 

高知の公共交通再生プロジェクト 【その2】公共交通再生の理念

【その1】から続きます。

 

【その1】でも述べたように、公共交通連合結成により、地方においても公共交通機関の利便性を大幅に改善し、通勤通学、ビジネス、買い物、休日の外出、観光など様々な場面で快適に公共交通を使えるようにし、クルマがなくても生活できる地方社会に変えていきたいと考えています。

 

現状では、高知市内に居住していても公共交通が不便なため最低でも一家に一台はマイカー必須です。なかなか問題が表面化することはありませんが、マイカーは、購入費も維持費も高額で家計に重くのしかかっていますし、交通事故のリスクも高く様々な問題を抱えています。

 

ここで詳しく述べるのは避けますが、クルマに依存した社会は他にも、慢性的な渋滞、土地利用の浪費、スプロール化によるインフラ維持コストの上昇、地域経済の疲弊などと様々な課題を抱えています。

 

それゆえ、公共交通が改善されればクルマ社会の様々な問題を解決することができます。

 

以下に、公共交通を再生していく理念を述べます。

 

1・家計はじめ暮らしの向上(マイカーを断捨離可能に!)

 

端的に述べますと「地方でもクルマやバイクを持たなくても快適に移動できる社会にしていきたい」ということです。

 

通勤通学、通院、所要、買い物、飲み、休日の外出、催し物へのアクセスなど日常の様々な場面、そしてビジネス利用でも公共交通が当たり前に使えるようにし、地方中核都市圏を中心にクルマやバイクを所有しなくても生活できる社会を目指していきたいです。

 

その結果、生活コストが下がり実質の可処分所得は上がります。浮いた分を他の消費や投資に回すことができるようになります。個人的には、ファッション関係にもっとお金回っていいと思ってますし(売れてるのはユニクロ、GU、しまむら、ワークマンばかり…)、日本の住宅事情は断熱性能などがまだまだ貧弱であるため、住宅・インテリア関連にも回るとよいと思っています。

 

ご存知の通り、マイカーの維持費はかなりのもので、多くの家庭において大きな負担になっているかと思います。ローン、保険料、税金、駐車場代、消耗品代、修理代、燃料代、反則金…もろもろ合わせれば、年間50万円以上かかる場合も珍しくありません。

 

この30年間、所得が上がらない中、消費税は上がり、社会保険料も上がり、可処分所得は下がっています。昔と違い携帯電話、スマートフォンの負担もあります。そんな中、クルマ本体の価格もガソリン代も高くなり、マイカーの維持費はより高いものになっています。

 

「クルマが趣味」「アウトドアで大いに活用している」という方は、それでも許容できるでしょうが、あくまでも通勤や買い物の移動手段と捉えている方にとっては、「なんとかならないか」というのが実情ではないでしょうか。

 

2・子育て支援(同伴の子供は運賃無料としたい)

 

詳しくは後々に述べますが、公共交通連合構想の運賃について、大人同伴で乗る場合は子供運賃は無料とし「家族連れでも気軽に利用できる公共交通」を実現していきたいと考えています。

 

現状、子供運賃は大人の半額ではありますが、家族で公共交通を利用した場合、短区間であっても非常に高額になり(大人2人と子供2人で大人3人分になります)、マイカーを持っていれば公共交通を利用すること自体が現実的ではありません。

 

家計支出の改善でも述べたように、マイカーの維持は高額であり、特に子育て世代は何かと他の支出も多く、その維持は楽ではないかと思われます。

 

子育て世代においても、マイカーを持たなくても(もしくは一家の台数を削減する)済む環境をつくっていきたいです。

 

3・高齢ドライバー対策(免許返納しやすい環境づくり)

 

2019年の池袋での事故を契機に、高齢ドライバーによる交通事故は大きな社会問題になっていますが、公共交通が不便な地方ではなかなか免許返納まで踏み切れないのが現状です。それでも「○歳までにクルマの運転をやめたい」と思っている方は、結構いらっしゃるようです。

 

今後さらに高齢化が進行すると、より問題は深刻になると予想されます。「免許返納しやすい環境づくり」として公共交通の改善は急務です。

 

4・人口減少対策(移住しやすい環境づくり、若者の定着)

 

公共交通が不便ゆえにマイカー必須な現状では、高知県内へ移住にあたって、住居探しに加えてマイカーの入手が必要になります。(高知市内であれば自転車があれば十分生活はできますが、マイカーがないと郊外部へのアクセスがやはり不便です)

 

運転免許を取得していない場合は、新たに免許の取得からはじめなければならず、移住における大きなハードルになっているかと思われます。

 

「移住しやすい地方づくり」として公共交通の充実は欠かせません。山間部等はともかくとして高知市都市圏については「公共交通が便利なのでマイカーなしでも全然大丈夫です!」と胸を張って言える状態になるのが望ましいです。

 

また、「若者の車離れ」と言われるようになり、都会ではマイカー所有どころか運転免許も取得しない若年層が増えています。地方では現状、マイカーは必需品であるため、表面上は車離れしていませんが、地方から若者が流出する大きな要因の一つに「交通の利便性」があげられているほどであり、マイカー所有をあまり積極的に捉えていないことが分かります。

 

5・観光活性化、アフターコロナにおける観光立て直し

 

コロナ禍以前より、高知県内において観光客の移動手段はマイカーやレンタカーが中心であり、公共交通を利用しての観光は不便なのが実情でした。これまで聞いた話でも、マイカーやレンタカーを利用しない人はせっかく高知へ来ても、ひろめ市場や高知城などごく狭い範囲だけを観光して帰る人が多かったのではなかったかと思います。(五台山や桂浜すら足を伸ばしていない場合も多いかと思われます)

 

先ほども述べたように、都会では「若者の車離れ」と言われて久しくクルマに対しての憧れも薄れていますし、高齢化もさらに進みます。インバウンド(外国人観光客)も勝手を知らない土地での運転には不安があります。マイカーやレンタカー中心の観光だけでは、今後厳しくなるのではないでしょうか?

 

<参考記事>

www.okinawatimes.co.jp

 

コロナ禍により疲弊した観光業界立て直し策として、都市部の「車を運転しない層」を新規開拓し、旅行先として優先的に高知を選んでもらうためにも、公共交通の利便性向上はより重要になってきます。高知が地方の中で先駆けて公共交通利用で観光できる環境を整えれば、それだけ他の地方に比べて優位に立つことができます。アフターコロナにおけるビッグチャンスと捉えています!

 

統一された運賃体系、連携のとれたダイヤ、分かりやすい情報案内等により、柏島足摺岬、梼原、本山、馬路村、室戸、甲浦など県内の末端地域にも容易にアクセス可能な公共交通を目指していきたいです。

 

また、キャンピングカーやバイクツーリングなどクルマやバイクを使って観光する層に対しても、住民や帰省客を公共交通利用へシフトさせることによって、観光シーズン時でも渋滞しない快適な道路環境を提供していきたいと考えています。

 

公共交通で楽しめる高知県へ!目指そう、800万人観光!

 

6・公共交通の持続的発展、従事者の労働環境改善

 

コロナ禍前より、高知の公共交通は様々な問題に直面しており、このまま行くと公共交通が崩壊する懸念も出始めていましたが、コロナ禍による急激な利用者減により一気に早まっていましました。

 

もはや、独立採算、民営事業の原則では維持は難しく、早急に「公共インフラ」「社会保障制度」として社会全体で支え持続可能な仕組みへ変革していくことが求められます。

 

しかし、クルマ中心社会で多くの人が公共交通を利用しない中、公共交通に多額の税金を投入することに根強い批判もあります。だからこそ、先行してダイヤ、運賃体系等を使いやすい仕組みに改善して、利用者が大幅に回復した実績をつくることが重要になってきます。

 

「日々、多くの人に利用され、公共交通が社会の中できちんと役目を果たしている」ことが実証されれば、積極的に公共交通に投資していく機運も生まれるでしょう。

 

また、公共交通の持続可能な運営には、従事者の労働環境を改善し人手不足を解消することも欠かせません。賃金を大幅に上げるのは今すぐは難しいかもしれませんが、せめて信用乗車方式の導入による接客業務からの解放案内放送の自動化GPSや画像認識を活用してボタン操作不要にできないだろうか?)で、業務負担を減らせればと考えています。

 

7・その他(SDGsへの対応、カーボンニュートラル中心市街地活性化、防災)

 

この辺はオマケです。防災以外は筆者としてはそこまで重視していませんが、高知県カーボンニュートラルの実現を発表し、SDGsも昨今取りざたされていることも踏まえ盛り込んでおきます。

 

www.pref.kochi.lg.jp

www.pref.kochi.lg.jp

 

防災面では、津波による被災リスクの高いとさでん交通桟橋車庫の移転もしくは高架化やJR土讃線の須崎付近の高架新線切り替え等が必要と考えています。

 

【その3】へ続く

 

【その3】公共交通連合について

高知の公共交通再生プロジェクト【その1】 アフターコロナを見据えて

アフターコロナを見据えて活動再開へ!

 

nomotoyasushi.hatenablog.jp

 

前回のブログ更新から早2年以上が経過しました。

 

2020年の2月はじめ、本格的に動き始めようとある県議会議員の方とお会いし、公共交通について議会質問に盛り込むことも検討していただけることになりましたが、その直後に未曾有のコロナ渦に突入しそれどころではなくなってしまいました。

 

三密回避がさかんに叫ばれ、満員電車が忌避されマイカー移動へシフトする傾向もあり、「クルマから公共交通へシフトを!」なんてとても言える状況ではなくなりました。

 

冷静に考えれば、電車やバスの車内は飲み会と違って会話も少なく、また事故のリスクもマイカーに比べて格段に少ないので、トータルでは公共交通利用の方が安全と言えるのですが、新型コロナウイルスの脅威の中では「密だから怖い!」という感情論が先行するのは仕方なかったかと思います。

 

「今は何も言うべきではないな…」ということで静観しておりました。個人的にも社労士試験の勉強もしておりましたし(2021年度試験で合格しました!)、ブログを書く時間すらなかなか時間をとれなかったという面もあります。

 

災い転じて福となす!? 今こそ仕組みを変えるチャンス!

 

周知の通り、コロナ渦における移動自粛の影響で、公共交通は急激な利用者減少により、事業者は経営上大打撃をこうむっています。

 

上の写真は、2020年3月19日の南風27号3号車の車内(確か香川県内走行中に撮影)ですが、見事にガラガラでした。自分を含めて1両に2名しか乗ってなかったように覚えています。「これはさすがにヤバいやろ…」というのが率直な感想でした。

 

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2021年9月には、とさでん交通が資金ショートの懸念があることも報じられました。

 

www.kochinews.co.jp

 

未だコロナ渦の終息が見えない中、まだまだ厳しい状況が続くかと思いますが、一方で「災い転じて福となす」ということで、前時代的な公共交通の仕組みを見直すチャンスでもあるとコロナ渦当初より考えていました。

 

公共交通の需要がズタズタになったのは不幸なことではありますが、今こそ終息後の需要回復策として、高知県内の公共交通事業者を事実上一つにする「公共交通連合(運輸連合)」を結成して利用者本位の地方公共交通へ変革していく絶好のチャンスであると考えています。

 

公共交通再生の理念など(詳しくは【その2】にて)

 

公共交通連合で実現したいことは、一言で言いますと「地方でも公共交通の利便性を大幅に向上し公共交通で当たり前に移動できる社会に変えていきたい」ということです。

 

結果として、購入費・維持費が高額で交通事故のリスクの高いマイカーを所有しない(または一家の所有台数を減らす)ライフスタイルが可能になり、観光においても公共交通利用で県内各地を快適に回れるようになります。

 

以下のように、地方の公共交通の利便性向上は様々な分野で効果を発揮すると考えています。

 

・家計はじめ暮らしの向上(マイカーを断捨離可能に!)

子育て支援(同伴の子供は運賃無料としたい)

・高齢ドライバー対策(免許返納しやすい環境づくり)

・人口減少対策(移住しやすい環境づくり、若者の定着)

・観光活性化、アフターコロナにおける観光立て直し

・公共交通の持続的発展、従事者の労働環境改善

・その他(SDGsへの対応、カーボンニュートラル中心市街地活性化、防災)

 

【その2】へ続く

 

【その2】公共交通再生の理念