地方の公共交通を立て直す!@高知家

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桂浜へ電車(LRT)を走らせよう!【その5・〔続〕地上設備編】

 

【その4・地上設備編】から続きます。

 

桂浜へ電車(LRT)を走らせよう!【その4・地上設備編】

 

軌間、架線電圧、ホーム高さは既存線を踏襲

 

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基本的なスペックは、上の図の中に書いてある通りです。

 

軌間は書き抜かっていましたが、当然ながら既存の桟橋線と同じ「1067mm」です。これは、さすがに異論はないでしょう。

 

架線電圧は桟橋線他現在の軌道線と同じ「直流600V」と想定しています。これについては、「桟橋車庫前」~「孕橋」間にデッドセクションを設けて、新線部分はより効率の良い直流750Vとした方が良いという意見もあるかと思います。宇都宮のLRTは直流750Vで計画されていますし、直流600V~750Vのデッドセクション伊予鉄道高浜線で実績があります。

 

それも一案ではあるのですが、そうすると乗り入れ可能な車両が極めて限られてしまいます。最初から対応している新型の低床車(現在運行中のハートラム・ハートラム2のことではありません)とVVVF化など大幅改造して対応させた従来車両に限られてしまいます。

 

せっかくの車窓が素晴らしい上に高知県屈指の観光地へ行く路線であり、電車自体も観光資源として一層盛り上げていくために、維新号、外国電車、200形(原型車)、おきゃく電車なども是非とも臨時・貸切運用で観光用として走らせたいところです。

 

直流600Vであれば、それらの車両もATS取り付け他最小限の改造で乗り入れ可能となります。以上より架線電圧は、現在の軌道線と同じ直流600Vが良いと考えています。

 

ホーム高さも、従来の路面電車と同じ低床ホームとし高さは300~350mmを想定しています。これについても、新線部分は高架で造るのだから低床ホームである必然性が全くないですし、桟橋線も短いし道路も広いのでこの際、「高知駅」~「桟橋車庫前」も含めてホームを高くして嵐電都電荒川線方式に一新した方がいいと言う意見もあろうかと思います。

 

これは高知駅より北部への延伸や追手筋線(元乗務員さんが提案されています。これはさすがにホームを高くはできません)の兼ね合いの他、筆者も東西系統については路面区間もホームを高くしてJR線、ごめん・なはり線と一体化したネットワークを構築することこそが正統進化と考えている反面、南北系統はLRTに進化しつつも在来車両も改造の上引き続き走らせ、ストリートカー、チンチン電車、トラムの雰囲気を残す路線としたいと考えています。

 

車体幅は最大2650mm、編成長は最大60mに対応

 

車両限界は、従来の最大幅2300mmから2600~2650mmと大幅な拡大を想定しています。現在のとさでん交通起軌道線の最大幅2300mmというのは、路線バスよりも狭く、都電荒川線長崎電気軌道札幌市電と並ぶ最狭クラスです。2400mmちょっとの伊予鉄市内線(旧型車両)や筑豊電鉄、2500mm近くある広島電鉄富山地方鉄道市内線、江ノ電などと比べるとその狭さは際立ちます。

 

せっかくの新線なので車両限界を見直す大きなチャンスです。従来の桟橋線区間も幸いにも距離自体が短い上に、直線主体で道路幅も広いので、新線部分の規格に合わせた改修は比較的容易だと考えらます。

 

f:id:nomotoyasushi:20180410144404j:plain(桟橋線の高知駅~潮江橋北詰間はセンターポール化されており、見たところ幅に余裕もありそのままでも最大幅2650mmに対応可能だと思われる 2018年2月18日)

 

普段からも沿線住民と桂浜への観光客が同じ電車に乗り、観光シーズン時はかなりの多客が予想されます。昔と違って、車椅子やベビーカーを押してのお客様、キャリーバッグを引いたお客様も当たり前になりました。それらへの対応を考慮したら幅にゆとりがある方が断然いいです。さらに、高知駅より北部へ延伸した場合、イオンモール関連や日赤病院の需要が加わることを考えたら幅のゆとりは絶対必要です。

 

最初は、広島電鉄江ノ電と同様の2500mm程度で十分と考えていましたが、せっかくの新線ですし、想定する新型部分低床車では台車上の高床部分に2列+2列の転換クロスシートを設けることを考えたら、もう少し拡大して2600~2650mmと福井鉄道のフクラム(F1000形)と同等のゆとりは持たせた方がよいと考えています。

 

f:id:nomotoyasushi:20180122160808j:plain(想定している南北系統用の部分低床車両 ※ポートランドMAX、Wikipediaより転載)

 

ホーム長さは、既存の桟橋線も含めて全長28m級の大型低床車重連に対応できる60m(※)を想定しています。観光シーズン時や桂浜でのイベント時など多客時に、増発に限界のある単線区間での輸送力増強策として増結運用を考慮しているためです。(平日ラッシュ時は主に複線区間での需要が大きいため、原則増発で対応)

 

(※)併用軌道では軌道法により、原則として全長30mまでとなっています。実現するには、特認か法改正が必要ですが、宇都宮のLRTも将来は45mの編成長を予定しており、法改正の流れも期待できます。

 

詳しくは【その6・車両編】で述べますが、【その2・需要予測編】で述べたように、従来の単行車やハートラム程度の定員70名クラスでは、間違いなく輸送力不足が懸念されます。高知駅より北部への延伸も視野に入れるとなおさらです。それらを入れてしまうと必要以上に増発に迫られ、人件費や車両費が無駄に増加してしまいます。

 

日中(通常時)の運行間隔は、「高知駅」~「孕橋」5分間隔、「孕橋」~「雪蹊寺(長浜)」10分間隔、「雪蹊寺(長浜)」~「桂浜」20分間隔を想定するなら、孕橋以南へ運行する車両は、早朝、深夜、ラッシュ時の増便などを除いてフクラム(F1000形)やグリーンムーバー(5000形、5100形)など定員150人クラスの輸送力(単行車の約2倍)を持った車両が要求されるでしょう。

 

桂浜への観光客は、観光シーズン時は相当な多客が予想されますし、電車延伸によって現在より大幅に増加すると思われます。それを機にマイカーでの直接アクセス規制(パークアンドライド)を実施するならば、さらならる輸送力が求められます。

 

閑散期の平日日中は、桂浜発着20分間隔、大型低床車1編成(単行車2両分)で十分捌けるかと思われますが、閑散期であっても土休日やシーズン時の平日では、同じ20分間隔でも増結して大型低床車+単行車(単行車3両分)、もしくは大型低床車重連(単行車4両分)と輸送力強化が必要になりそうです。

 

さらに、最繁忙期や桂浜でよさこい祭りなどイベント実施時は、大型低床車重連(単行車4両分)かつ倍の10分間隔に増発して対応が迫られるでしょう。

 

そららを考慮すれば、ホーム長さは大型低床車両2編成分に対応した60mが求められると考えられます。

 

JR車両乗り入れなど将来への拡張性も考慮?

 

走らせる車両は、最大でも幅2650mm、全長60m弱までで、ホームも低床でその車両規格を前提に構築することを想定していますが、せっかくの新線であるのでそれに留まらず、将来への拡張性を織り込んだものにしてはと考えています。

 

 

せっかくのJR在来線と同じ1067mm軌間なので、いざとなったら最低限の改修で、JR在来線規格の車両も乗り入れ可能な構造で造っておけば、JR土讃線から乗り換えなしで臨時列車やクルーズトレインが桂浜まで入線できるようになります。

 

ただし、高架の新線区間まで路面区間を通ってやって来るのか、果たして別の新線を経由してやって来るのか分からないですし、そもそも将来実現するかどうか分かりませんし、いくらJR在来線車両が走れるように設計しておいても、一部に急カーブが存在する以上、ボルスタレス台車の車両は入線できそうもないです。さらに、電化と非電化、さらにJR土讃線が電化されたとしても架線電圧の違いもあるなど、色々と難しい面はあります。気動車による乗り入れであれば比較的容易でしょうけど。

 

かなり難しい問題ですが、あくまでも「将来への拡張性」という意味でJR在来線規格に対応させておいた方がいいでしょう。

 

最高速度、保安装置について

 

新線部分は、軌道法準拠の軌道線ではなく鉄道法準拠の「鉄道線」とする考えのため軌道法による最高速度40km/hの制限はありません。直線が続くところなど速度が出せるところは、通常時は75km/hまで、回復運転時は90km/hまで出せるものを考えています。

 

所要時間は、はりまや橋~桂浜間で23~25分程度を目指しています。現在のバス路線は、最速で27分でほとんどが30分ダイヤ上かかっており(バスなので実際はそれより遅れると考えた方がいい)、それに比べると大幅な時間短縮となります。

 

鉄道線であるため保安装置は当然ながら必要になります。新設路線であること、高い安全性、イベント用など旧型車両への設置も考慮すればATS-Pが最も妥当でしょう。

 

JR東日本仙石線埼京線に導入されている、閉塞方式にとらわれずコスト削減も可能な最新の保安装置であるATACSも候補になりえます。ただし、維新号などの旧型車両を走らせようとすれば、そのままでは対応不可で、ブレーキ方式を電気指令式に改修する必要が出てきます。

 

 

既存の桟橋線も近代化してトータルでLRT

 

先ほども、既存の桟橋線についても車体幅2650mmに対応させ、ホームも60mまで延長すると述べましたが、それに留まらずよりLRTとしてふさわしい路線になるためには、スピードアップ、定時性向上につながる改良が求められます。

 

f:id:nomotoyasushi:20180410144624j:plain(桟橋線「桟橋通二丁目」へ繋がる歩道橋よりはりまや橋方面を望む 2018年2月18日)

 

まず、最高速度も従来の40km/hは、さすがに遅すぎます。軌道法の改正が必要ですが50km/h以上に引き上げたいところです。

 

 

無駄な信号待ちを減らすため、青信号の延長が可能な優先信号も導入したいところですし、道幅に余裕があるので安全性の向上面で軌道敷との間に縁石を設置してセンターリザベーション化も検討項目に入ってきます。

 

 

電停については概ね現行通りで問題ないですが、「桟橋通一丁目」~「桟橋通四丁目」間は比較的詰んでいるので、「桟橋通二丁目」と「桟橋通三丁目」は、中間の国道56号線との交差点部分に電停を新設し統合した方がいいでしょう。

 

以上の改良と運賃収受方式の見直しによる乗降時間短縮により、現在「はりまや橋」~「桟橋通五丁目」間で約10分要しているところ、実質さらに一区間増える「はりまや橋」~「孕橋」間を、1分短縮した9分で運行できるようになるでしょう。

 

高知駅前電停がそのままでは60mホームに改修できない、一部ではその編成長の車両が停まると後方の交差点にはみ出る箇所があるなどの問題もありますが、それらについても書き出すと長くなるので、また別の機会に譲ります。

 

【その6・車両編】へ続く

 

桂浜へ電車(LRT)を走らせよう!【その6・車両編】

 

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