地方在住者の視点から行き過ぎたクルマ中心の交通社会が大いに問題だと考える2つの理由。
行き過ぎたクルマ依存社会、いったい何が問題なのでしょうか?
過度なクルマ依存社会が抱える問題として一般に、地球温暖化、エネルギー問題、大気汚染などの環境問題、スプロール化、中心市街地の空洞化、騒音などの都市問題がよく取り上げられます。
どれも、非常に重要な課題ですが、専門的で難しい上に必ずしも日常の生活に直結した問題ではないため、一般的にはなかなかピンとこない部分も多くあります。誰もが関わる「足」の問題ではありますが、その割には世間の関心が薄いのも無理はありません。
しかし、地方のあまりにも行き過ぎたクルマ中心の交通社会、もっと日々の生活に直結しているところで極めて大きな問題を抱えていると、地方で暮らしている一人としても切実に実感しています。
大きく分けて、以下の二点です。
[その1]クルマ関連の高額な出費がただでさえ少ない地方在住者の所得の多くを食いつぶしてしまっていること
高知県のような地方では、一家に一台どころか一人一台クルマを所有するのが当たり前になっています。
高知市内に住んでいても、マイカーを持っているのはごく当たり前ですし、山間部はもちろん、香南市や須崎市のような小都市ともなれば完全に必需品です。こういうことを書いているぼくだって、バイク(原付二種)に日々乗っているくらいです。
ここで、高知県の経済情勢について少し述べていきます。
2009年度、高知県の一人当たりの県民平均所得(内閣府の「県民経済計算」による)は、201万7000円でした。この結果が発表されたとき、非常に注目を浴びました。
なぜなら最下位の座が、長いこと定位置で決まっていた沖縄県ではなくて、高知県だったからです!!
(http://diamond.jp/articles/-/21037より引用)
翌年度は、沖縄県が再び最下位に転落していますが、一瞬でも沖縄県以外の都道府県が最下位になったという歴史的な出来事(?)だったのです。
地方に行けば行くほど、県民所得は低くなる傾向にあります。下位10位には、沖縄県や高知県の他、宮崎県、長崎県、鳥取県、岩手県、秋田県など、いずれも四国、九州、東北の県が占めています。
ここで注意が必要なのは、この統計は勤労者の給与額の他、年金支給額や企業所得、利子収入などを合計したものを県民の総人口で割っているため、勤労者の給与水準とは必ずしも一致しません。あくまでも都道府県の経済力を表した指標の一つです。平均所得が低い都道府県ほど貧乏生活で暮らしにくいというわけでは決してないですよ。
とは言っても、高知県の所得水準は、非常に低いところにとどまっているのは、一県民の実感としても間違いありません。
正社員であっても手取り15万円というのは当たり前ですし、夫婦合わせても手取り20万円台前半というのもめずらしくありません。奥さんがパートタイマーで働きに出るなど(高知県の共働き率は全国一です)して、家計を支えていますが、この程度の所得水準では、生活の余裕はほとんどないのが現実です。切り詰めるところは切り詰めて、なんとか家計をやりくりしているのが実態でしょう。
話がやや脱線しましたが、このようにただでさえ所得が少ないというのに、そのかなりの部分を高額なクルマ関連の費用が食い潰してしまっています。
購入費(ローン)、税金、保険代、燃料代、修理代、駐車場代・・・どれをとっても高い高い…。超金食い虫!それらが同時に重なれば相当痛い出費です。ぼくも経験していますが、突発的な故障が一番痛かったりします。
多くの人は、趣味のためやステータスを求めてクルマを所有しているわけではありません。日常の足として「ないと困る」から所有しているのが実態です。あくまでも移動のための「手段」に過ぎません。
所詮は手段に過ぎないものに高額な負担を強いられるという、極めて高コスト体質な社会の構造が出来上がっているわけですよ。
以下のツイート、大いに同感です。そこそこ所得が高くても、クルマの維持は決して楽ではないと思いますね。
ふと思ったのは、家のローンと教育費に加え車を購入して維持するのは実は並大抵のことなんではないと思ったわけです。日本の場合毎年自動車税がかかり、2年毎に車検があります。駐車場、ガソリン、高速、車本体の支払い…僕には現状とても無理です。 https://t.co/sbDx7p2O5i
— 高木 史郎 (@TakagiShirou) 2015, 10月 10
ただでさえ、給料から税金と保険を速攻で引かれ、生活費としても住宅費、食費、光熱費、教育費、通信費、医療費(自己負担分)、生命保険代…と出費が嵩む上に、クルマ関連にも多額の費用が嵩んでしまうと、それなりに所得があっても、生活に一杯一杯で娯楽費や嗜好品代などに回すような余裕はほとんどなくなってしまいます。
こんな生活、決して豊かな社会とは思えませんね。
[その2]交通事故の高いリスクを常に抱えて日々生活しなければいけないこと
通勤もクルマ、スーパーへの買い物もクルマ、休日の外出もクルマ、どこへ行くにも常にクルマという地方の交通社会、よくよく考えたら「ものすごくおっかないことだよなぁ・・・」と思うのですよ。
道路を走っていると、交通事故の現場に遭遇することは日常茶飯事です。「ああ、またか…」としか思わないくらい当たり前。このブログを読まれている方だって、軽微なものを含めて交通事故の一度や二度は経験したことはあるかと思います。
被害者になっても加害者になっても、交通事故はいろいろ煩わしいものです。軽微な自損事故であっても、修理費は往々にして高額なものになります。フルコースで任意保険に加入すれば、そういう面では一応安心ですが、今度は保険代が高くなってしまいます。どっちにしても、高額な出費を強いられます。
先日ぼくも、Twitterでこうつぶやきました。
車に全面的に依存した地方社会って、事故に巻き込まれる、または自分が事故を起こしてしまう高いリスクを抱えて常に生活しているわけだが、なぜ当事者はそれをほとんど問題視しないのか不思議でならない。それどころか、平気で危なっかしい運転してる人がかなりいるし。
— クルマ依存脱出で地方新時代へ!@高知家 (@motorization) 2015, 10月 11
正直なところ、クルマ依存社会って職場へ無事に辿り着けるかどうか分からないよ。安全運転をいかに心がけても信号で追突されたり対向車が突っ込んでくる可能性が常にあるのだから。
— クルマ依存脱出で地方新時代へ!@高知家 (@motorization) 2015, 10月 11
日常生活の基本である自宅と職場の往復ですら、日々無事に完遂できるかどうか分からないというのがクルマ社会の怖いところです。誰もが、こんな危険すぎるものに日常生活を委ねないといけないというのは、異常極まりないことです。
ぼくも、高知市へ行くと時は主にバイクで行っていますが、今まで事故に遭っていないのは単に運が良かったというのに過ぎません。正直、たった20kmそこらへ往復するだけでも無事に行って帰ってこれるか不安です。
本当は、安心安全で自分が運転する必要もない「ごめん・なはり線」をもっと利用したいのですが、本数はともかく運賃があまりにも高すぎて(夜須~高知間約23kmで片道810円もします!)なかなか使えないのですよね・・・。
最後に一言。
公共交通がクソレベル(率直に言います!)で、マイカーにばかり頼らないといけない地方社会は、一地方在住者としても決して暮らしやすいとは言えないというのが実感です!