地方の公共交通を立て直す!@高知家

地方の車社会、公共交通、自転車活用をはじめとする交通論・都市計画論、その他いろいろ

『地方は活性化するか否か(マンガでわかる地方のこれから)』 面白く取っ付き易く地域再生を扱った良書です。

 

昨今(いや10年以上前からか?)、「地方衰退」、「地方消滅」などと騒がれており、それに対して「地方活性化」、「地方創生」、「地域おこし」、「地域再生」、「まちづくり」を進めていかねばと、いろいろなところで耳にします。

 

しかし、「一体、何をもって衰退と言えるのか?」、「何をもって活性化なのか?」。「活性化」と一言で言いますがが、極めて曖昧な表現でなかなかピンと来ないものです。

 

地方が衰退していると言っても、何も現状、街中に失業者が溢れかえっているわけでもなく、日常生活に支障がでるような状態にはなっていません。個人的にはそれが曲者で、「活性化」、「創成」、「再生」という言葉ばかりが一人歩きしているように思います。

 

以前より気になっていた地方活性化について描かれた啓発マンガ『地方は活性化するか否か』、このたび読んでみました。

 

マンガとは侮るなかれ。マンガだけにサラッと読み流すことも可能ですが、テーマはかなり深く、地方のおかれている現状、それに対する「手段が目的になってしまっている行政の活性化策に対する批判等」についても、よく現状を捉えた内容になっています。

 

地方活性化について興味を持ち始めた人はもちろん、改めて再認識したいという人にもオススメできます。

 

ややとっつきにくいテーマながらも、それを女子高生という親しみやすいキャラを活用して市民としての目線から問題提起しており、あくまでもフィクションという設定にはなっていますが、読み進めると「あ、うちの街もそうだ。そうだ」って、共感するところが多くあります。

 

地方中心都市「みのり市」が舞台

 

架空都市「みのり市」は、その地方の中心的な都市で人口は30万人という設定になっています。高知県で言えば、まさに高知市そのものです。

 

みのり市も、少子高齢化、人口減少・流出、市街地の空洞化という問題を抱えており、「将来どうなるのだろう?」っていう不安にさらされています。これも多くの地方に共通し親近感が湧いてくる設定です。

 

「自分のとこ(地方)でもまさにそうだ!」と思える記述多し

 

作中では、登場する女子高生や社会科教諭が、かなりストレートに辛口(?)な地方批判を繰り広げています。登場するきれもの(?)女子高生「いくのん」の発言が中心ですが、

 

・再開発で街並みはスッキリしたけど、なんか寂しい感じがする

・中心市街地は廃れ、駅前は居酒屋とビジネスホテルばかり

・街中にセレモニーホール(葬儀場)が乱立

・行政は活性化名目でハコモノを作る

 

「ズバッ!」と言ってくれますね(笑) 

 

まさに「あるある」です。ロードサイドのセレモニーホール(出来始めはもの凄い違和感がありましが…)なんか、高知でもすでにお馴染みの光景です。閑散とした駅前に必ずあるビジネスホテルも、「言われてみれば…」です。

 

地域活性化=地方経済の活性化、金を稼ぐこと!

 

「イベントをやって地域活性化」、「ハコモノをつくって地域活性化」、「ゆるキャラ地域活性化」、「ホームページで地域活性化」…

 

作中では、補助金事業で始めたものの、その後の運営まで考えておらず、たった3ヶ月で更新が止まった「地域発信サイト」を具体例(あくまでもフィクションです!)としてまるまる章を割いて取り上げいますが、いずれも地域活性化と称して地方でよく行われていることですね。高知県でも毎週末のようにどこかでその手のイベントが開かれています。

 

それら、「手段が目的化」してしまった行政の地域活性化についてもズバッと批判を交えながら描かれています。それで一時的ににぎわっても「決して”にぎわい”ではない!単なる”にぎやかし”にすぎない」と。

 

これも陥りやすい罠をズバッと突いています。イベントを開いただけで地域活性化に取り組んだつもりになっている関係者、まさにあるあるです。確かに、補助金を使って一過性のイベントを開いても、その後の波及効果がなければ「単なる予算消化」で、関係者にカネを配っただけで終わってしまいます。

 

「にぎわいはカネをかけて作るものではなく、カネを稼いだ結果として生まれるもの」「カネが入ってこなきゃ地方なんて活性化するわけないだろ!」

 

正論すぎます。漠然と「にぎわいが生まれれば地域活性化」と思い込んでいる人が読めば、ちとグサッとくるかもです。

 

そんな現状には、「やりっぱなしの行政」「頼りっぱなしの民間」「無関心な市民」という構図が根底にあるとも述べられています。「実際、多くの地方でそうだろうな〜」って思いながら読み進めました

 

身の丈にあったことから始めていこう!

 

終盤では、作中に登場する女子高生たちは、楽しみながら身の丈にあったことを始めようということで、「みのり高校地方活性研究部」という部活を立ち上げ、「イメージの発信」と「問題提起」を軸としたサイト、SNSを開設します。

 

しかし残念ながら、作中ではその後の具体的な展開は描かれておらず、やや尻切れトンボな感は否めません。

 

本書は、あくまでも地方活性化についての「問題提起」、「啓発」を目的に作られており、こればっかりは仕方ないように思います。当然ながら「これが解決策だ!」というような結論が述べられているわけではありません。

 

身の丈にあったことから始めよう!まずは地域について知ろう!意識して行動してつながりを広げていこう!楽しく面白い雰囲気を地域活性化の原動力にしよう!

 

「地域について意識して行動していこう!」という呼びかけにとどまっていますが、ひとまずこれでいいんだと思います。

 

最後はこう締めくくっています。

 

「人任せ」にしないで自分でできそうな… やれることをまずやってみることが「地方の活性化」にはいちばん大事なことなのではないかと

 

「地方は活性化するか否か」 それは… そこに住むひとりひとり次第なんだと思います!

 

関連ブログ、SNSなど

 

・著者ブログ

Web4コマ 地方は活性化するか否か

 

著者のブログで、連載していた4コママンガが、話題を呼び本書の執筆につながったようです。

 

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