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脱クルマで地方は豊かになる!

地方の車社会、公共交通、自転車活用をはじめとする交通論・都市計画論、その他いろいろ

自転車のお医者さんである「まちの自転車屋さん」、地方小都市では消えつつあります。

  

昭和の香りを今に伝える「まちの自転車屋さん」


「まちの自転車屋さん」というと、どんな姿を思い浮かべるでしょうか?

 

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京都府舞鶴市にて2012年4月5日撮影)

 

たぶん、こんな姿を思い浮かべるかと思います。

 

古ぼけた商店街の一角にあり、レトロな外観の店構えですっかり色あせた看板を掲げていたりします。今もあるメーカーでも昔使用されていたロゴだったり、はたまた今は亡きメーカー名だったり、判読不能となっていることも珍しくありません。

 

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このように、昭和時代のポスターがそのまま貼られていることも…。


寂れた商店街の他の商店と同じく、特に何もせずにそのまま数十年の時間が経過した結果、意図せずとも昭和時代の雰囲気を色濃く伝えていたりします。それが今に残る「まちの自転車屋さん」の姿です。

 

ご高齢となった店主が持ち込まれた自転車を細々と修理をしていたりします。もはや後継ぎはいません。店主が引退すれば、それはそのまま廃業を意味します。

 

全国では、このような個人営業の自転車店はどんどん減っています。ホームセンターや量販店が台頭する前は、自転車を買うところは「まちの自転車屋さん」でした。家電製品を「まちの電気屋さん」で買っていたのと全く同じ構図ですね。 

 

しかし、激安ママチャリを大量に販売するホームセンターや量販店が郊外のロードサイドに進出するようになってから、ごっそり客を取られてしまいました。個人商店では、それに真正面から太刀打ちすることは不可能です。長年使える高品質の自転車を販売しようにも、消費者の意識も「安いのを使い捨てればいい」という感覚になってしまったので、やはり客足は遠のいてしまいます。「まちの電気屋さん」のようなアフターサービスで生き残るにも厳しい状況です。

 

香南市の自転車屋さん現況

 

こうして多くの田舎町では自転車屋さんは壊滅状態になってしまいました。香南市においても、自転車屋さんの現状はこれに近いものになっています。

 

「近い」と書いたのは、現在生き残っている自転車屋さんは、いずれも「二輪車店」で原付やオートバイ(自動二輪車)を扱っているので(むしろそちらがメイン)、なんとか自転車屋さんとしても営業を続けているからです。

 

個人営業の自転車屋さん(二輪車店)は、旧野市町に2店舗旧赤岡町に3店舗現存しています。

 

旧野市町の2店舗は、いずれも「のいち駅」付近の旧街道沿いにあります。一方はほぼバイク屋さんで、バイク・自転車とも特に新車を展示はなく中古車中心の整備屋さんという趣ですが、一方は原付バイクの他、ブリヂストンの各種自転車を展示するなど自転車にもそれなりに力を入れています。

 

旧赤岡町の3店舗のうち2店舗が商店街にあり、両方とも特に展示はなく整備屋さんという趣で、1店舗は国道沿いに展開しています。こちらは、展示車両も用意されています。

 

ホームセンター等の量販店は、いずれも旧野市町にホームセンターが2店舗、総合スーパーの自転車売り場が1店舗あります。ホームセンターの方は、安いママチャリとクロスバイクもどきが中心ですが、スーパーの方はそれなりに良い自転車も置いています。

 

夜須町ではすでに自転車屋さんは壊滅

 

ぼくが住んでいる旧夜須町にも、自転車屋さんはかつて2店舗ありました。一方はバイクと自転車兼業で、一方は自転車専業でしたが、前者は10年以上前に閉店し、後者も店主が高齢になり10年ほど前に事実上閉店しています。

 

つまり、町から自転車屋さんが完全に消えてしまったわけです。

 

香我美町では、昔より自転車屋さんはないそうで、クルマ屋さんがカタログで個別にオーダーをとり、修理等の面倒も見ています。

 

香南市のような田舎町では、自転車専業ではもはや生き残れないようです。原付やオートバイも扱う「二輪車店」だからこそなんとか生き残っています

 

いずれも、店主はまだまだ元気ですが、後継ぎがいない場合は店を畳む日はそう遠くないかもしれません。


自転車を購入する場合、もちろんそれらの自転車屋さんで自転車を手に入れることはできます。しかし、常に多種多様な自転車を店頭に揃えているわけではありません。せいぜい数台です。カタログでのオーダーがメインで、その場ですぐにお持ち帰りというわけにはいきません。

 

個人的には、店頭に置くのは展示車や試乗車にとどめ、その場で適当に選ぶのではなく、店主とじっくり相談して用途にや体格に合った自転車をオーダーするのが、本来あるべき自転車の購入方法で、店側、客側、お互いにとってもその方が断然よいと思っていますが、すでに消費者の意識は「店頭ですぐに手に入れるもの」になっていますからね。

 

なので多くの人は、在庫が豊富にあり、すぐ手に入り、値段も安い、ホームセンターやスーパーの自転車売り場へ真っ先に行ってしまいます。特に、ホームセンターに置いてあるのは、粗悪品の激安ママチャリだったり、激安折り畳み自転車だったり、クロスバイクモドキだったりするのですが、「自転車=ママチャリ」(近所を歩くより楽に移動するだけの乗り物)の等式がある以上、品質やメンテナンスなんかぶっちゃけどうでもいいですしね。その場で安く手に入ればそれでいいのですよ…。

 

そういう面でも「まちの自転車屋さんにとって状況は厳しいなぁ…」と思わざるを得ません。

 

自転車のお医者さん

 

”町から自転車屋さんがなくなる”


これは単に、「自転車を購入するところが地域からなくなってしまう」ということだけではありません。

 

自転車に日々乗っていれば、タイヤやブレーキも擦り減りますし、チェーンも伸びます。ときにはパンクしたり、倒してハンドルの取り付けが歪んだりと故障もしますし、調子が悪くなることだってあります。安全かつ快適に乗るには、日々の点検整備は欠かせません。

 

自転車はクルマやオートバイに比べて、はるかにシンプルな構造の乗り物です。ある程度は、ユーザー自身でも部品の交換や調整は可能と言えば可能です。

 

しかし、経験を積み慣れてないとなかなか上手くいかないものです。特に、微妙な調整は素人には困難です。例えば、ママチャリの後輪の取り付けは、完全に真っ直ぐかつチェーンの張り具合も適度な状態で取り付けるのは至難の技だったりします。

 

やはり、プロの腕は必要不可欠です。

 

「まちの自転車屋さん」は、いわば「自転車のお医者さん」なのです。

 

いや、お医者さんという側面が圧倒的に大きいでしょう。買うのは5年や10年に1回という頻度ですが、修理は年に数回というレベルでお世話になります。

 

自転車屋さんが地域からなくなるということは、自転車にとってそのまま無医村状態になることを意味します。

 

お医者さんがいなければ、その地域は人が住みづらくなります。自転車だって同じです。調子が悪くなっても直すこともままならなければ、次第に乗らなくなるでしょう。ホームセンターの激安ママチャリはいくら使い捨て前提と言っても、壊れたらまた次を買って乗るでしょうか?まして、香南市のようにクルマにべったり依存している地域で。

 

まちの自転車屋さんでは、もちろんメンテナンスを受けることは可能です。国産のママチャリや通学自転車なら一通りの整備を受けることはできます。長年の経験もあり腕は確かでしょう。ホームセンターでも一応修理は受け付けています。ただし、その腕は・・・。

 

ですので、旧野市町や旧赤岡町は、決して自転車無医村ではありません。まだ救われています。

 

だが、それらの自転車屋さんから離れた地域はどうでしょうか。近い人は走行不能な状態であっても押してでも持って行って修理を受ける事ができますが、そうでないと延々押していくか、クルマに積んで持ち込むか、出張修理を頼むかしかありません。いずれにせよ煩雑で費用も高くなりかねません。毎回、その手間をかけてまで自転車に乗る気はなくなってきます。行き着く先は、車庫の肥やしでしょう。

 

先ほども述べたように、ぼくが住んでいる旧夜須町はまさに「自転車無医村」になっています。見事に自転車屋さんが壊滅してしまいました。

 

「タイヤを交換したい」、「ちょっと調子が変だな?」と思っても気軽にみてもらえる場所がありません。ガソリンスタンドや自動車整備工場でもみてもらえますが、本業ではないため、頼みにくい上に内容もパンク修理など最低限です。

 

夜須町では、この10年というもの自転車に乗っている人を、小中学生を除いてほとんど見なくなってしまいました。最後の自転車屋さんが店を畳んでから一気に減ったように思います。

 

スポーツ自転車にとっては事実上無医村状態

 

ぼくは通学自転車の他、クロスバイクや折りたたみ自転車などスポーツ自転車も保有しています。趣味のためだけでなく、日常の足としても活用しています。

 

しかし、香南市内の自転車屋さんで修理等を依頼することはまずありません。ジャイアントやビアンキなど海外ブランドのスポーツ自転車を全くと言っていいほど扱っておらず、それらに対する知識や技術があるとは到底思えないからです。

 

以前、折りたたみ自転車「BD-1」の空気を入れるため、フロアポンプを借りようとしましたが、フレンチバルブ対応のものすら置いていませんでした(笑)

 

スポーツ自転車は完全に対象外ということを如実にあらわしています。海外ブランドのスポーツ自転車にとっては香南市は、事実上無医村状態です。

 

最近、無医村状態になってしまったのではなく、少なくとも20年以上前から無医村状態のようです。かつては、国産ツーリング自転車などを扱っていたとは思いますが。つまり、海外ブランドの台頭という時代の変化についてこれなかったということです。

 

ぼくの場合、メンテナンスはどうしているかと言いますと、タイヤ交換やブレーキ調整など基本的なことは自分でやっています。ママチャリよりは遥かにメンテナンスしやすい構造(前後輪とも工具なしで簡単に外せます)ですので、多くの部分は自分でも整備可能です。滅多にないですが、高度な整備が必要な場合は、高知市のプロショップまで20km以上を自走して持っていきます。

 

高知県下で、スポーツ自転車を扱っているプロショップがあるのは、ほぼ高知市だけです。

 

例外的に、香南市よりド田舎で辺境(ちょっと失礼な言い方でスマンが・・・)の土佐清水市にプロショップ(森自転車店)がありますが(近年、四万十市にも出店しました)、例外中の例外です。県下で第二の人口(約5万人弱)を有する南国市にすら存在しません。

 

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高知市以外の高知県下の市町村ほぼすべてが「スポーツ自転車無医村」を意味しています。

 

ぼくは、ある程度は自分でやっているからなんとかなっていますし、プロショップまでもかろうじて自走できる距離です。

 

もし自分でメンテナンスができなかったら(スポーツ自転車の場合、プロショップが近くてもタイヤ交換くらいは覚えることを強く推奨します)、クロスバイクにすら満足に乗れないことを意味します。

 

香南市や南国市は、高知市に近いからまだいい方ですが、これが須崎市室戸市だったらどうでしょうか?自走して持って行くには時間も体力もかかりすぎますし、輪行やクルマに積んで持って行くにもやはり遠いです。気軽にとはいきません。休日を使って”わざわざ”持っていく必要があります。硬派なマニアはそれでもいいでしょうが、日常の足として考えている人がそこまで面倒なことは絶対にしません。

 

ママチャリや通学自転車にせよ、クロスバイクにせよ、香南市のような地方小都市もとい田舎町で「普通に自転車に乗る」だけでも、これだけのハードルがあるわけですよ。

 

「地方の田舎町には自転車文化がない」ということを如実に表しています。