脱クルマで地方は豊かになる!

地方の車社会、公共交通、自転車活用をはじめとする交通論・都市計画論、その他いろいろ

地方小都市では自転車文化がそもそもありません。根本的に情報も不足しています。

 

自転車文化の壊滅したまち、高知県香南市

 

高校を卒業すると同時に自転車も卒業するほどのクルマにべったりと依存したライフスタイルで、まちの自転車屋さんもバイク屋さんの副業で細々とやっているにすぎないという香南市の自転車事情、その現状を一言で表すと、ズバリこういうことです。

 

”自転車文化が壊滅してしまっている”

 

ぼくが小学生だった20年以上前、出身の旧夜須町でも自転車に乗っている人はもっと多かったように思います。旧夜須町でもママチャリで行ける地元商店街が、まだ賑わいがあり機能していましたし、運転免許を持っていない高齢者も多かったからです。自転車屋さんが存在したのも需要があったからに他なりません。

 

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(1990年代初期の夜須町商店街 『わたしたちの町 夜須』より転載)

 

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(現在の夜須町商店街 2015年10月23日撮影)

 

時は過ぎ、地元商店街も風前の灯火です。今も元気に営業しているのは、小型スーパーと魚屋さんくらいです。旧赤岡町や旧野市町のスーパー、ドラッグストア、ホームセンターなどへクルマで買い物に行くのが普通になりました。当然、ママチャリ移動圏を超えるから、みんなクルマで行きます。当時もよく行ってはいましたが、現在よりはその頻度は少なかったように思います。高齢者も世代交代して免許を持つ人が多数派になりました。

 

悪循環の行き着く先?

 

そうして、自転車に乗る人は減っていきました。自転車に乗る人が減ると、自転車屋さんも細々と営業を続けていくのみで積極的な展開にはまず至りません。店主の引退などを機会に店を畳みます。

 

そうして無医村状態になってしまうと、ますます自転車に乗りづらくなります。壊れたら、放置してもう自転車に乗らなくなるか、ホームセンターの安物ママチャリを買って使い捨てることになりますが、それではママチャリのごく限定的な使用にとどまり、クルマの代替には全くなり得ません。

 

結局のところ、自転車にはほとんど乗らなくなってしまいます。旧夜須町であっても、旧野市町であっても、程度の差こそありますが状況は同じです。

 

悪循環の行き着いた先が、現在の香南市の姿です。

 

自転車文化は見事に壊滅状態。主に大都市部でわき起こった自転車ブームなど陰も形もありません。ガソリンが高騰しても、消費税が増税されても、脱メタボと言われても、自転車に乗ろうという気配は全くもって感じられません。

 

もっとも、高知市のとあるプロショップの話しによりますと、高知に自転車文化と呼べうるようなものは、昔から広く浸透していたわけではなかったみたいですが。 

 

忘れ去られた交通手段

 

(その3)で述べたように、多くの人にとって「自転車=ママチャリ」というイメージでしか認識されていないということは、こういうことでもあります。

 

香南市では高校を卒業して免許を取り、一旦クルマに乗り出すと、自転車には全くと言っていいほど乗らなくなってしまいます。子供も、当たり前にクルマに乗っている大人を見て育ちます。ちょっとした距離でも、親がクルマに乗せて連れて行くのが普通です。

 

「大人になったらクルマに乗るもの」という意識が生まれて当たり前なのです。

 

ぼくだって高校生のころは、行き過ぎたクルマ社会に懐疑的だったのに関わらず、「高知では大人になったら自分のクルマを持って当たり前」と、さほど疑いもなく思っていたくらいです。

 

結局のところ、高校卒業まで乗っていたママチャリや通学自転車の世界だけで終わってしまいます

 

ただでさえ性能がよくない自転車を、タイヤの空気はブヨブヨ、サドルはべったり、チェーンはサビサビという状態で、さらに低性能化して日々乗っているので「自転車はしんどくてかったるい!もうこりごり!」という嫌な思い出しか残りません。

 

クルマの運転にすっかり慣れたころには、自転車の存在はすでに忘却の彼方となってしまいます。もはや、自転車が「移動手段である」という概念すらもないように思いますね。

 

根本的に情報不足です

 

やはり、香南市に住んでいるとママチャリや通学自転車以外の自転車についての情報に触れる機会がなかなかないのですよね。

 

ショールームになり得るカッコいいスポーツ自転車を軒先に並べているプロショップもなければ、サイクルモードのような展示会や試乗会というイベントも身近にはありません。

 

あるのは、バイク屋さんが兼業でやっているひたすら受け身でしかない自転車屋さんと、ただ安物を売っているホームセンターだけ。

 

自転車を、便利で快適な移動手段として、ファッションやライフスタイルとして、積極的に提案する場所や機会が、身近なところに全然ないわけですよ。

 

クルマや携帯電話と比べてみると、その違いは顕著です

 

クルマの場合、香南市程度の都市であれば、メーカー直営のディーラーが必ずあります。香南市では、トヨタ、ホンダ、日産ともにあり、トヨタに至っては2店舗も展開しているくらいです。展示車も用意されており、スタッフから丁寧に説明を受けることができますし、試乗することもできます。メンテナンス体制も万全です。

 

さらに、イオンモールや地域のイベントなどでも、定期的に展示販売会が開催されており、ディーラーに出向かなくても目に触れる機会は多くあります。

 

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(2015年10月3日 イオンモール高知にて撮影)

 

反面、自転車の展示会など見かけたこと一回もありません。

 

携帯電話にしても、香南市内には大手3社ともに販売店があります。それこそ、室戸市土佐清水市くらいの田舎であっても出店しているくらいです。お店に行けば、身近に新モデルを見て触れることができますし、何か困ったことがあってもすぐに相談できます。

 

両者とも自転車との情報量の差は歴然です。それらに比べたら自転車の情報などないに等しいレベルです。もっともそれ以前に、各種メディアへの広告等の露出度も、全くの桁違いですが。

 

そして、颯爽とロードバイクやクロスバイクに跨がって市内を駆ける大人の方もほとんど見かけません。自転車に乗っている大人の方がいたとしても、古ぼけたママチャリや通学自転車に乗っているオジさんばかりです(笑)

 

子供の目からしても「かったるくてダサいもの」としてか認知されないのも無理はないでしょう。

  

繰り返し言いますが、香南市のような地方の田舎町で生まれ育つと、ママチャリ、通学自転車以外の自転車を知る機会は、残念ながらほとんどと言っていいほどありません。

 

「カッコよくてオシャレなもの」、「便利で快適な乗り物」と、自転車をポジティブに捉えるきっかけが絶望的なくらいにありません

 

書店に行けば自転車雑誌はごく狭い範囲ながらも置いていますし、昔と違ってインターネットで検索すれば様々な情報を容易に入手することはできますが、自分からそれを求めない限りまず情報は入ってきません。

 

実際に、多くの市民の方々にとってクロスバイクやロードバイクが、どのような自転車であるかということすら、ほとんど知られていないと思います。実際に聞いてみても、ジャイアントやルイガノすら知られてないという有様ですよ。

 

何を隠そう、ぼくも大学に入学するまで、見事にママチャリと通学自転車以外は何も知らなかったのですから。クロスバイクというジャンルがあることも知りませんでしたし、メーカーもジャイアントすらも知らなかったくらいです。詳しくは次の記事で述べます。

 

参考:中学・高校時代、ママチャリと通学自転車とMTBモドキが知っている自転車のすべてだった件について

 

香南市のような地方小都市で、まるで自転車が使われていないというのは、一般に普及しているママチャリでは地域事情に対応しづらいこと以上に、そもそも情報が不足しており、半ば忘れられた乗り物になっているという面が大きいと思います。

 

だからこそ、いかに情報を伝える機会を作っていくかが重要になるのですよね。