とさでん交通後免線・葛島橋付近で平日朝ラッシュ時の乗車具合を観察してみました。
昔からいうと減ったとは言っても、現在でも年間約600万人に利用者されており、市民の足としても定着しているとさでん交通の路面電車。通勤通学の手段として現在も大いに利用され、ラッシュ時には次々と電車がやって来てそれなりに混雑しています。
2016年5月30日(月)、葛島鉄橋西側の歩道橋より観察
「朝ラッシュ時、路面電車は中心市街地方面への通勤通学でどれだけ利用されているか?」
それを把握すべく、定点観察して調べてみました。
観察した日時は、2016年5月30日の月曜日。至って普通の平日です。時間帯は、ラッシュに差し掛かる7時手前からラッシュを過ぎた8時半過ぎまで。当日の天気は快晴で、朝からかなり暑く直射日光のあたる場所で長時間観察するのは、結構堪えました。
観察した場所は、葛島鉄橋東詰~知寄町三丁目間にあたる葛島鉄橋西側の歩道橋からです。地図の赤丸をつけた箇所です。ちょうど郊外の住宅地から市街地区間に差し掛かるところで、歩道橋もあり自動車に邪魔されず写真も撮りやすく、観察するにはもってこいの場所です。
はりまや橋方面へ向かう電車ごとに写真を撮り、葛島橋を通過したおおよその時刻(時刻表より推定)と、始発とその時刻、終点を項目に記載し、混雑具合等についてコメントしていきます。
電停の位置関係が分かりやすいよう、路線図を転載しておきます。
(とさでん交通ホームページより転載)
[1]6時55分頃 文殊通6:49分発伊野行(602号)
7時手前の6時55分頃に葛島橋を通過する電車より観察開始しました。まだ、ラッシュ時間帯ではなく文殊通発ということもあって空いており、座席にも十分余裕があります。乗車人数は20名弱というところです。
[2]7時1分頃 後免町6:35発朝倉行(605号)
立ち客も見られますが、座席も空席が見られ、程よく乗っているという程度。後免町から来ているにしては乗ってないようにも思います。
[3]7時9分頃 文殊通7:04発鏡川橋行(213号)
出た非冷房車。当日は5月末とはいっても、朝から結構暑く、冷房がないのは厳しいかも。乗車具合は座席が7割程度埋まる程度で20数名というところです。213号は、ツーマン運転していた時代の塗装を復刻しています。
同じくとさでん交通の路線バスも来たので撮ってみました。おそらく潮見台発だと思います。小型のバスながらも乗車率は、座席が半分埋まっている程度。通勤通学の時間帯でもこんなものです。本数もかなり少なく「いかにバスが利用されていないか」という実態が見て取れます。
[4]7時16分頃 文殊通7:11発伊野行(617号)
いよいよ本格的にラッシュに入ってきました。文殊通発ながらも座席はほぼ埋まり、前方では立ち客も見られます。
[5]7時18分頃 田辺島通7:08発枡形行(624号)
朝ラッシュ時特有の系統で、文殊通と領石通の中間あたりの田辺島通発の枡形行です。上の617号と似たような乗車率です。
[6]7時21分頃 後免町6:55発鏡川橋行(619号)
程々に混んできています。
[7]7時24分頃 文殊通7:19発朝倉行(802号)
多くの窓でブラインドが降りており、ちょっと分かりづらいですが、立ち客が数名いる程度の乗車具合です。
[8]7時30分頃 文殊通7:24発鏡川橋行(603号)
暗くて分かりづらいですけど、立ち客はおらず座席は半分ちょっと埋まっている程度に思えます。ラッシュ時ながらもかなり空いてます。先発も文殊通発でしたので、そちらに集中したのでしょうか。
直後に来た反対方向の後免町行・214号です。見事なガラガラぶり。
[9]7時34分頃 後免町7:06発鏡川橋行(621号)
後免町から来ており、中心市街地にも7時45分頃と結構良い時間帯に着くこともあって、それなりに混んでいます。
[10]7時39分頃 文殊通7:33発伊野行(703号)
通称「痛電車」と言われる、パチンコ・ホームランの広告電車。窓にもラッピングしているせいで車内の様子が分かりづらいですが、立ち客は数名見られました。
[11]7時40分頃 領石通7:24発枡形行(610号)
またまた痛電車wwww ブラインド、ラッピングのダブルパンチで相当分かりにくいですが、後ろにも立ち客が見られるあたりかなりの乗車率だと思われます。枡形行の朝ラッシュ時特有の系統です。
それにしても、反対方向は終点まで走る後免町行であってももガラガラすぎます。
[12]7時42分頃 後免町7:14発鏡川橋行(627号)
アンパンマン電車の627号です。ブラインドが完全に降りており、かなり分かりづらいです。ブラインドのない入口ドアのところから見た感じでは、ピーク時だけにかなりの立ち客がいるものと思われます。
627号が去った後、知寄町三丁目方面の様子を撮ってみました。それにしても大量のクルマ…。業務用車やバスも混じっていますが、ほとんどはマイカーです。こういう光景を見ると「都市内でマイカーを野放しにし過ぎている!」と思わざるを得ません。
[13]7時46分頃 文殊通7:40発朝倉行(607号)
座席がほぼ埋まり、数名立ち客がいる程度。
[14]7時47分頃 領石通7:31発鏡川橋行(212号)
またまた非冷房車による運用です。にも関わらず、かなり混んでおり立ち客ギッシリ。これで冷房がないのはちょっと…。
[15]7時49分頃 後免町7:21発鏡川橋行(616号)
サイバラ電車の616号。かなりの混み具合で立ち客満載。中心市街地には8時頃に到着する便だけにかなり混んでいます。
[16]7時52分頃 領石通7:36発枡形行(207号)
さっき非冷房車がやってきたばかりですが、また非冷房車がやってきました。昭和20年代の金太郎塗装を復刻させた207号。ブラインドが降りているため、観察しづらいですが、前方にも後方にも立ち客が見られるため、かなり混んでいるものと思われます。
[17]7時56分頃 後免町7:27発鏡川橋行(611号)
この時間帯の電車は、中心市街地にちょうどよい時間帯に着くこともあってどれも混んでいますね。
[18]7時57分頃 後免町7:29発桟橋車庫前行(210号)
はりまや橋(デンテツターミナルビル前)から桟橋線に入りそのまま車庫に帰る朝ラッシュ時特有の系統です。高知市東部方面から土佐中学・高校、高知工業高校、高知南中学・高校へ乗り換えなしで行け、通学の便を図っています。座席が埋まり、立ち客数名という乗車具合です。それにしても、200形には「とさでんカラー」は全然似合わないな…。
[19]7時59分頃 文殊通7:53発伊野行(701号)
立ち客10名程度かな。
[20]8時1分頃 領石通7:45発枡形行(206号)
前方にはブラインドがかかっていますが、立ち客数名というところだと思われます。それにしても、この15分間というもの、非冷房車が交互にやってきています。枡形行などラッシュが終われば入庫する運用に非冷房車が充当されているのでしょう。
[21]8時4分頃 後免町7:36発鏡川橋行(628号)
多くの窓はブラインドが降りていますが、立ち客も見られ少なくともガラガラではないでしょう。
[22]8時7分頃 文殊通8:01発朝倉行(615号)
文殊通発でピークを過ぎたため、結構空いています。
[23]8時10分頃 領石通7:54発枡形行(803号)
座席が半分弱埋まる程度です。
[24]8時13分頃 後免町7:44発鏡川橋行(613号)
とは言え、後免町からやって来るのは、まだ結構乗ってますね。
[25]8時15分頃 後免町7:47発鏡川橋行(612号)
立て続けに後免町からやって来ます。窓へのラッピングとブラインドのダブルパンチでよく分かりませんが、立ち客がいるので座席が埋まっているのは確かだと思われます。
[26]8時18分頃 後免町7:49発鏡川橋行(208号)
またまた後免町発の便です。座席が埋まり立ち客5名程度。結構頻繁に非冷房車がやってきますね。
[27]8時20分頃 文殊通8:14発伊野行(626号)
10名程度の乗車です。
[28]8時23分頃 後免町7:55発鏡川橋行(2001号)
さっきの文殊通発よりは乗っていますが、20名程度というところでしょうか。もうラッシュ時は過ぎましたね。
[29]8時26分頃 後免町7:58発鏡川橋行(801号)
こちらも20名程度の乗車です。
[30]8時30分頃 文殊通8:24発朝倉行(601号)
またまた20名程度の乗車具合。文殊通発にしてはよく乗っています。
[31]8時33分頃 後免町8:05発鏡川橋行(214号)
意外にも立ち客がそれなりにいます。10分前、7分前に通過した便は全員座れていた程度の乗車具合でしたけど、なぜか8時半も過ぎた便がかえって混雑しています。中心市街地には8時45分頃着くので9時出社の人が集中して乗っているのかも?
[32]8時36分頃 文殊通8:30発鏡川橋行(620号)
10名ちょっとの乗車具合です。タイミングを間違えて後方が切れてしまいました(笑)
[33]8時39分頃 後免町8:11発鏡川橋行(618号)
約15名の乗車具合。この時間帯にもなれば完全にラッシュは過ぎたようです。
[34]8時43分頃 文殊通8:37発伊野行(605号)
先ほどの618号で歩道橋からの観察は撤収しましたが、ちょうど知寄町三丁目電停付近で電車がやって来たので、ついでにもう一枚撮影。文殊通発の伊野行です。見たところ10名弱の乗車具合でした。以上をもちまして、今回の観察は終了いたします。
まとめ
ラッシュ時間帯に1時間以上観察して、改めて「通勤通学の手段として路面電車はよく利用されている」と思います。昔からすれば減ったとは言っても、現在も立ち客満載で走っており、時代に取り残された感はありながらも現役バリバリの都市交通としての健在ぶりが伺えます。
7時前から8時にかけての約1時間に、20便の電車が運行されています。それに平均で約30人乗っていれば約900人、平均で40人乗っていれば約1200人もの人々が、高知市郊外部から中心市街地へ向けて移動してることになります。
これを一人乗りのマイカーで裁こうと思えば、新たに片側二車線追加する必要があります。仮に電車の軌道を剥がしても片側一車線しか追加できないので、マイカーに置き換えたらたちまち破綻してしまいます。加えて「街中の駐車場どうするの?」っていう問題も。
バスで運ぼうと思っても、路面電車の1両よりは乗れる人数は限られますので(乗ろうと思えば乗れるけどね、相当ヤバイ混雑になりますよ…)、電車よりも増発する必要がありますし、そもそも他の自動車に揉まれて快適に走れず、定時性にも難ありまくりで利用者からの信頼も電車ほど得られないでしょう。結局は住民から相手にされなくなりあまり利用されなくなってしまことに…。現実、高知市都市圏の路線バスはまさにそのような状態に陥っています。
つまり、マイカーにもバスにも出来ないことを路面電車は平然とやってのけているわけですね。他の交通に邪魔されない専用の走行路を持ち、収容力もそれなりに高いのは、やはり大きな強みです。どんどん落ちぶれていった路線バス(とさでん交通のバス路線全部あわせても電車よりも利用者数は少ないという惨状ぶりです!)を尻目に、今もよく利用されているのは「電車だからこそ」っていうのが大きいでしょうね。
ほんと、これまで残ってくれてよかったと思います。車両の老朽化・設備の貧弱さ(下のリンク参照)と色々問題は抱えていますが、路面電車の良さを継承しつつそれら問題点を克服し、新しい時代に通用する都市交通へ進化を遂げることを期待しています。その辺は、後ほどまた書きますね。