地方の公共交通を立て直す!@高知家

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桂浜へ電車(LRT)を走らせよう!【その2・需要予測編】

 

 【その1・概要編】から続きます。

 

桂浜へ電車(LRT)を走らせよう!【その1・概要編】

 

【その2】として先に、地上設備案について書く予定でしたが、電車(LRT)を走らせて果たしてどれだけの需要が見込まれるかということは、何より重要な事柄ですので、【その2】で取り上げます。

 

沿線人口は、後免線郊外部を凌駕!

 

まず、沿線人口から需要がどれだけあるか考察します。

 

高知市の郊外としてマンションが立ち並び人口が急増し、1990年代には市内系統の折り返しが知寄町から文殊通に延伸されるほどになった、とさでん交通後免線沿線の葛島・高須地区等と比較してみます。

 

高知市がホームページで公開している人口統計(2018年1月1日)より作成しました。

 

f:id:nomotoyasushi:20180131105351j:plain高知市南部地域と高知市東部地域の沿線人口比較 2018年1月1日現在 ※縮尺同一)

 

左が桂浜へ電車延伸を想定している高知市南部地域、右が新興住宅街が発達している高知市後免線沿線の高知市東部地域です。

 

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f:id:nomotoyasushi:20180116105347j:plain高知市横浜地区・瀬戸地区に広がる住宅地 2017年9月29日

 

写真のように、高知市南部の横浜地区・瀬戸地区は、同東部の葛島・高須地区と同様に新興住宅街として発達しており、「後免線沿線に匹敵するか、市街地の広さからそれ以上の人口を抱えている可能性もある」と考えていましたが、実際に調べてみてその予想は見事に的中しました。

 

桂浜線沿線になるであろう赤枠内で囲った地域の人口は、後免線沿線の赤枠内で地域の囲った人口よりも4,000人以上多いということが判明しました。さらに、その南に位置する長浜地区も、約9,000人とかなりの人口を抱えています。末端部の浦戸地区も約900人居住しています。

 

f:id:nomotoyasushi:20180117010313j:plain(住宅街の発達した高知市南部地域 ※グーグルマップより)

 

「横浜新町」地区は、想定ルートからかなり奥に位置していますが、地形状の問題もあって、高知市中心街などに移動するには、基本的に線路が通るであろう県道まで出てくる必要があること(西側にも県道が後年通っていますが)、電車が通ったら最寄り駅からフィーダーバスの設定が想定されるなどの要因から沿線としてカウントしています。

 

一方、後免線沿線の「介良乙」地区と「高須東町」地区は、合計で8,000人弱の人口を抱えていますが、国道(南国バイパス)より南側であり、地形上からも中心街へアクセスするのに電車沿線まで出てくる必要がないこと、電車とは別に潮見台方面の路線バスも走っていること、特に「介良乙」地区に関しては、広大で電車沿線とは言い難いためカウント外としています。


以上より、「ニュータウン」と呼べる地域の人口は、高知市南部地域は同東部地域を凌駕しています。

 

さらに、そのさらに郊外に位置する地域の人口も、東部地域の「大津乙」(7,800人)よりも南部地域の「長浜」(9,121人)の方が、若干多いことが判明しています。地形および想定ルートからも、必ずしも全域が沿線ではない大津乙地区に対して、長浜地区はほぼ全域が電車沿線になると考えられます。

まとめると、沿線人口からは電車を走らせるに値する需要は十分すぎるくらいあると推定できます。職住分離されたニュータウンの性質上、多くの人は中心市地等へ通勤しています。しかも、低地で地盤も軟弱で津波の浸水や液状化が懸念される高知市東部とは異なり、ニュータウンの多くは強固な地盤で津波が届かない高台に位置しています。電車が通ることによって、さらなる人口増加と利用者の増加が期待できる地域です。

 

高知競馬場へのアクセス需要もなかなかのもの

 

現在、高知競馬場へは高知駅から無料の送迎バスが運行されていますが、本数は競馬場行き往路2便、高知駅行き復路1便と限られており(以前はもっと充実していたようですが…)、路線バスでのアクセスもかなり不便であり、ほとんどはマイカーでのアクセスであると考えらます。

 

桂浜へ電車が通るとなれば、高知競馬場は沿線からは2km以上離れていますが、最寄駅から無料のシャトルバスが運行されることが想定され、公共交通でのアクセスは飛躍的に改善されると考えられます。

 

高知競馬場への入場者数ですが、多い時で1日1,500〜2,500人も入場しています。

 

www.sankei.com

 

ハルウララが話題になっていた時は、5,000人を超える時もあり、武豊騎手が騎乗した時は、約13,000人と入場制限を発動するまでに及んでいます。

 

matome.naver.jp

 

 5,000人越えは特別中の特別にしても、2,000人程度の入場者数でもバカになりません。仮にその半分の1,000人が電車を利用すると仮定すれば、単行の路面電車(定員75人)で13両分、大型LRV(定員150人)で6〜7編成分になります。大型LRVで運行する場合、「高知駅」〜「雪蹊寺(長浜)」間を10分間隔で走らせるとしたら、1時間まるまる競馬場へ行く乗客だけで満員になる計算です。

 

開催日は限られていますが、開催日にはバカにならないほどの需要があると考えられ、また電車が通ることによってマイカー以外でも競馬場へ行きやすくなり、競馬場のさらなる活性化も期待できます。

 

雪蹊寺への参拝需要は未知数だが…

 

電車の想定ルートは、四国八十八ケ所・第三十三番札所である「雪蹊寺(せっけいじ)」のすぐ側を通ることになります。現在の長浜バスターミナルのすぐ近くでもあり、当然そこに駅を設けることになるでしょうから、駅からのアクセスも抜群の立地です。

 

具体的な参拝客数のデータがないため、需要を予測することは困難ですが、公共交通利用でまわっているお遍路さんの需要は確実にあるでしょう。

 

f:id:nomotoyasushi:20180217110859j:plain雪蹊寺 ※Wikipediaより転載)

 

 桂浜への観光客、繁忙期は増結&増発しないと捌けないかも?

 

沿線住民の通勤通学需要と同等に、大きな需要となりうるのが桂浜への観光需要です。ゴールデンウイークやお盆やもちろん、その他の三連休などの繁忙期は、多くの観光客で賑わっており、需要はかなり高いと推測できます。

 

「桂浜公園整備基本計画」(資料編)(PDFファイル)の資料に、駐車場(有料)の利用台数から推定される、桂浜公園の来場者数のデータが掲載されております。

 

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f:id:nomotoyasushi:20180217100232j:plain(「桂浜公園整備基本計画(資料編)」より転載)

 

1年間では、2013年度は約71万人、2014年度は約65万人、2015年度は約66万人で、1日最大(いずれもゴールデンウィーク期間中)では、2013年度は約10,300人、2014年度は約8600人、2015年度は約9,200人となっています。

 

ちなみに、「土佐・龍馬であい博」が開催された2010年度には、年間100万人を達成しています。高知市の計画では、その100万人を目標にすることが謳われています。

 

オフシーズンの平日は、冬の閑散期は1日1,000人以下、その他も1,000人〜2,000人程度で、オフシーズンの土休日は、2,000〜3,000人程度となっています。

 

ゴールデンウイークは先ほど述べたように、ピーク時で1日10,000人にも及び、年末年始、7月の連休、お盆、シルバーウィークなどのシーズン時は、1日4,000〜6,000人程度となっています。

 

ピーク時はかなりの観光客が来ており、これだけの観光客が桂浜へ来ているのは正直驚きです。にも関わらず、現状のアクセス手段はマイカー(レンタカーもかなり多い)中心で、駐車場のキャパ不足や周辺道路の渋滞という問題を抱えています。(だからこそ、ゴールデンウィーク期間中はパークアンドライドを実施していますが)

 

オフシーズン時の土休日は、1日2,000〜3,000人程度ですが、高知駅〜桂浜間を20分間隔で定員150人の大型LRVを走らせた場合、6時間の片側輸送力(2,700人)に匹敵します。

 

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観光客のほとんどは、午前9時から午後3時の間に来ると思われますから(夜にお酒が飲める飲食店ができればその限りではない)、電車延伸によって現状よりも観光客数の底上げがなされ、加えてマイカーでの来場規制(桂浜駐車場の縮小&大幅値上げとパークアンドライドの推進など。渋滞対策や桂浜駐車場の他用途への転用を考えると絶対にすべきです!!)を実施して、現状以上の観光客が電車に乗って桂浜へやって来ると想定した場合、桂浜への観光客だけで満員になる計算です。

 

オフシーズン時の平日は、上図(B)パターンで十分こなせそうですが、オフシーズン時でも土休日は、電車延伸により来場者数が増加すれば(B)パターンでは厳しくなり、大型LRVに単行車を増結した(C)パターンでの運行が求められるようになるかもしれません。

 

お盆、シルバーウィーク、年末年始など4,000人〜6,000人も来る繁忙期は、同じ20分間隔でも(D)パターンの大型LRV重連で運行(6時間片側輸送力5,400人)でないと、捌けないほどの観光客が現状でも来ています。

 

さらに、1日1万人も来るゴールデンウィーク時や桂浜でよさこい祭り他のイベントを開催するならば、(H)パターンの「10分間隔に増発」かつ大型LRV重連で運行(6時間片側輸送力10,800人)が必要になるほどです。それでも、便によっては桂浜発着時点で超満員という状態すら想定され、混雑で沿線住民に迷惑がかかってしまう懸念すらあります。その時は、市内区間高知駅~孕橋)折り返し運用を南部に延長する形で、「雪蹊寺(長浜)」以北は増発の必要がありそうです。

 

沿線人口と桂浜への来場者数を考慮すると、単行の路面電車程度の輸送力ではまるで用事にならないことが容易に想像つきます。利用者の伸び悩みどころか、沿線人口や観光客数の増加によっては輸送力不足になる心配もあるくらいです。

 

「桟橋車庫前」〜「雪蹊寺(長浜)」間は、宇津野トンネル部分や瀬戸西町三丁目以南は、工事費用や用地買収費用削減のため単線で妥協でも大丈夫だろうと思っていましたが、考えを改めて最初から完全に複線で敷設しておかないと将来に禍根を残しそうに思えてくるほどです。

 

もし、桂浜への年間来場者数が100万人どころか150万人まで増加し、その8割が電車利用で来場すると仮定すれば、単純計算で往復で240万人もの利用者が桂浜への観光客だけで見込めます。年間200万人まで増加すれば、年間320万人にもなります。現在のとさでん交通路面電車全体の年間利用者数が約550万人ということを考えると驚異的な数字です。

 

沿線への通勤利用も可能な限り増やす努力を

 

沿線住民が中心市街地等への通勤(通学)する需要だけでなく、他地域から沿線への通勤需要も当然見込めます。沿線には、商業施設、医療・福祉施設、工場などの事業所が多くあり、高知競馬場桂浜水族館、桂浜荘などの桂浜へ通勤している方々もいらっしゃいます。ただ、沿線への通学需要は、沿線に高校がない(既存の桟橋線沿いには複数あります)ため、一部の専門学校に限られます。

 

ただし、どれだけの通勤需要があるかは、各事業所でどれだけの就業者数なのか、個々の従業員がどこから通勤しているのか、電車が通ったらマイカー通勤から切り替える意思があるかどうかなどを、詳細に調べないことには正確な把握は難しいですが、渋滞対策、脱クルマ依存という観点からも可能な限りマイカー通勤を削減し電車通勤に切り替えてもらう施策を打っていくべきでしょう。

 

結論:電車を伸ばす需要は十二分にある!

 

冒頭で述べたように、沿線人口は高知市でも屈指のレベルを誇り、通勤通学客という固定客は十分見込め、それでまず安定収入は確保できます。

 

帯屋町等の繁華街へも直結していますので、土休日や夜間の需要も見込めますし(ただ、もうちょっと帯屋町には頑張ってほしいですが)、高知駅からイオンモール方面へも伸ばせば、さらに多くの需要が見込めます。

 

もちろん、JR高知駅へも直結していますので、JR土讃線、高速バスとも連絡し広域交通とも連携できます。はりまや橋では既存の後免線、伊野線や空港連絡バスとも連絡しており、それらも利用者増につながるでしょう。

 

また、横浜から蒔絵台・高岡方面、桂浜から医療センター・空港方面、桂浜から宇佐・浦ノ内方面などのバス路線開設(復活)も想定され(バス運転手の人手不足問題はさて置いといて)、電車・バスの連携で公共交通全体の利便性向上も大いに期待できます。

 

それらに加えて、桂浜と高知競馬場へのアクセス需要は相当なものです。桂浜の観光客の多さは、調べてみて改めて驚きました。両者とも日や時期によって需要の変動は激しい傾向がありますが、電車が通ることによって全体的な底上げにつながってくると思われます。

 

特に桂浜は、面白くなりそうです。駐車場を減らし芝生広場に転用すれば、曜日市を桂浜で開くことも可能になりますし、桂浜を眺めながらお酒が飲める飲食店ができれば夜も楽しめる場所になります。そして、よさこい祭りをはじめ様々なイベントの開催が可能になります。観光客だけでなく市民も楽しめる場所になり得ます。

 

何度も述べていますが、太平洋や浦戸湾の風景が広がる車窓は素晴らしく、江ノ電のように電車自体も観光資源になります。

 

それらをすべて加味すると、高知駅~桂浜間の南北系統だけで見ても、開業当初から年間1000万人以上に利用される路線になりそうです。繰り返しますが、現在の路面電車全体の利用者数が年間約550万人ということを考えたら、驚異的(!)と言える公共交通の再生につながります。

 

【その3・目的編】へ続く

 

桂浜へ電車(LRT)を走らせよう!【その3・目的編】

 

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