地方の公共交通を立て直す!@高知家

地方の車社会、公共交通、自転車活用をはじめとする交通論・都市計画論、その他いろいろ

地方でも「若者のクルマ離れ」の予兆は垣間見えています。

 

昨今「若者のクルマ離れ」とよく言われています。

 

直接の原因は若者の収入低下ですが…

 

若者がクルマをあまり欲しがらなくなった、免許を取らなくなったと。特に、公共交通の発達した大都市ではその傾向が顕著だそうです。

 

matome.naver.jp

 

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若者のクルマ離れの直接の原因は、非正規雇用が増えるなど若者の収入が低下したことでしょう。将来への不安もある中、経済的余裕がなければ、こんな超高額商品そうそう迂闊に手を出すことはできません。

 

スマートフォン(携帯電話)やインターネット関連の出費も大きな原因でしょう。その二つの月額費用を合わせると、クルマのローン支払い額に匹敵します。かつては、スマートフォン(携帯電話)やインターネット関連の出費はありませんでした。そこはバブル期とは大きく異なる点です。

 

若者の価値観も大きく変わりました。かつてクルマは、単なる移動のためだけの道具ではなく、ステータスシンボルであり、憧れの対象でした。デートするにもクルマありきでした。彼女を助手席に乗せるのが男の憧れでした。そういう価値観が共有されていたからこそ、生活上持たなくても困らない大都市であっても、多額の借金をしてでも憧れのクルマを求めていました。

 

良くも悪くも、発展途上国的だった時代は遠くに過ぎ去りました。今の若者は、堅実で現実主義です。貯金している人はしっかりしています。事故のリスクも高く、維持費もべらぼうにかかる商品だけに一歩踏みとどまって冷静に考える人が多くなったのだと思います。

 

とにかく、時代背景も若者のメンタリティも20年前、30年前とは全く異なっています。あんな時代は二度とやってこないでしょう。

 

仮に、若者の収入が大幅に改善されたとしても、バブル期のように、皆がこぞってクルマに向かうとは到底考えられません!

 

「今の若者はクルマにも興味を持たない」と、クルマ業界は嘆きますが、いま冷静になって考えたら、多額の借金してまで超高額商品をこぞって買っていた時代の方が異常に思えてきます。

 

自動車教習所の教官に聞いてみた

 

高知県のような地方では、生活必需品ですので統計上はクルマ離れしていないと考えられます。しかし、クルマに対する考え方はかつてから比べたら大きく変わっているようです。

 

普通自動二輪免許を取得するために教習所に通っていた時に、教官からこのような話しを聞きました。

 

かつての若者は、何が何でも免許をとってやろうという意気込みがあった。早くクルマに乗りたいというバイタリティがあった。予約が取れなくてもキャンセル待ちを狙い朝から待合室に居座る。実技で上手くできなかったら悔しくて泣く。できるようになるまで必死に頑張る。今となっては、そういうガッツのある若者はめっきり減った。今の若者は、とりあえず免許は必要だからという感じでクルマへの執着はあまりない。

 

 その話しからも、かつては免許を取得してクルマに乗ることが、一人前の大人として認められる一大イベントだったことが見て取れます。

 

一方、今となっては「まあ足として必要だから」という感じです。クルマにこだわる人は確実に減りました。高知でもヤンキーの改造車も目に見えて減ったように思います。(逆に痛車が増えていますがね…)

 

多くの若者は、燃費にすぐれ維持費も(あくまでも相対的に)安い軽自動車を積極的に選んでいます。高知では若い女性の方に至っては、7〜8割が軽自動車に乗っているように思います。1990年代までのような「男が軽自動車に乗るなど論外!」っていう風潮は影も形もありません。若者から中年男性まで当たり前に軽自動車に乗っています。

 

地方でもクルマが必要でない状況になれば、クルマを手放す可能性は決して小さくない。

 

教官は、さらにそうおっしゃっていました。

 

公共交通やカーシェアリングが充実すれば、地方でもクルマとのつき合い方は大きく変わってくる可能性があることを示唆しています。

 

高知市ではクルマを手放す例も

 

香南市ではさすがに知らないですが、高知市ではクルマを持っていないという方を複数例知っています。その中には免許を持ってない人もいます。「今のところ取得するつもりはない」とも言っていました。

 

家庭を持ちながら手放した人もいます。「毎月駐車場代を払うのがアホらしく思ってきた。必要に応じて適宜レンタカーを借りれば十分事足りることに気づいた。嫁さんには、クルマ持って一人前みたいな意識があるためか、最初はブツブツ言われたけど(笑)」と言っていました。

 

高知市コンパクトシティ、なければないでなんとかなるんですよね。

 

すでにクルマを持っている若者も、足として必要だから持っているまでで、それほどクルマをいいものとして捉えてはいません。

 

ある知り合いが「とにかく金がかかるのでキツい」って言ってました。中古で買ってしばらくして、エンジン関係の故障で修理費が8万円ほどかかった時にはPS4買うつもりやったのに当分買えんなったちやー」ってブツブツぼやいていました。

 

これから免許を取るという知り合いも「まだクルマ買うかどうか分からない。クルマ買ったら厄介ごとが増えるからなー。人をひいてしまう恐れもあるしね」って言っていました。

 

地方でもクルマ離れの予兆は垣間見えています。公共交通がマトモに使えるようになったら、、、一体どうなるやら?

 

もっとも、東日本大震災以降はそれほど言われなくなりましたが、「エコ」だの「CO2排出削減」だのさかんに言っていた以上、若者の方からクルマ離れしてくれるのは願ったり叶ったりのはずですが…。

 

普通に生活していて突然借金(ローン)が増えてしまうクルマ社会の不条理。

 

前記事「クルマとスマホのために働く地方の若者。」で取り上げた女性の方ですが、この話しには続きがあります。

 

一瞬の不注意による自損事故でクルマは廃車に…

 

ある年の冬、不幸にも事故を起こしてしまいました。

 

日曜日に遊んだ後、帰宅途中に不注意(本人いわく居眠りだとか)で工事現場に突っ込んだという自損事故です。クルマは修理不能と判断され(シャーシが歪んでしまったらしい)廃車となりました。だが幸いにも、怪我はほとんどありませんでした。壊してしまった工事現場の修復費用や怪我の治療費は、任意保険の対物賠償保険、搭乗者傷害保険に加入していたため、それで全部補填できました。

 

しかし、車両保険には入っていませんでした。

 

保険代が高くなるのを嫌ったのか、そこまで必要ないと思ったのかは定かではありませんが、代替のクルマを入手するための資金は、保険からは1円たりとも下りません。自力でなんとかする必要があります。

 

参考:高知県の任意保険(対人対物)加入率、約58%!クルマ社会はすでに行き詰まっています!

 

ローンを一本化して代替の新車を購入

 

結局、新たにローンを組んで新車(同じく軽自動車)を買うことになりました。中古車ではなく新車を買ったは、通勤距離が長いだけに下手に中古車にすると燃費が悪くなるからだそうです。その際、残っていた前のクルマのローンも借り換えて一本化し、新たに8年でローンを組んだそうです。

 

事故当時、前のクルマのローンは残り1年半ほどでした。ローンを払い終わってもずっと使い続けるつもりで、「10年以上乗るつもりだった」と本人はおっしゃっていました。

 

ゴール(ローン支払い完了)までもう一息だったのに…。トラップにひっかかってスタート(ローン支払い開始)まで引き戻されてしまった…。

 

そんな感じですよ。いや、金額が多くなった分、前回のスタートラインよりもさらに手前にまで戻ってしまったと言えます。

 

そんな状況になっても、本人は「クルマが壊れただけでよかった」と至って前向きにとらえています。それはそれで素直に素晴らしいと思います。起こってしまったことをいつまでも悔やんでも仕方ないですからね。

 

突然、莫大な出費を強いられたり借金が増えてしまう不条理

 

確かに、本人の不注意が引き起こした事故ではあります。

 

と言っても、何も無謀運転や確信的な道交法違反をしていたわけではありません。普通にクルマを運転していただけですよ。

 

この種の事故は誰にでも起こりえます。どんなに安全運転を心がけていても、無意識のうちに漫然運転になってしまい、前方のクルマに追突ということもありえます。

 

至って普通に運転していても、ほんの一瞬の不注意で大怪我を負ってしまったり、莫大な経済的損失を抱えたりするのです。廃車にならずとも、修理費が数十万円かかることもめずらしくありません。ほとんど、パチンコで大負けしたようなものですよ。

 

パチンコは行かなければいいけど(そうは言っても、パチンコに通うことをやめられない「ギャンブル依存症」の方も多いので社会問題になっていますが)、公共交通が不便な地方、クルマに乗らないわけにはいきません。パチンコよりタチが悪いです。

 

普通に日々生活していて、突然莫大な出費を強いられたり借金(ローン)が増えてしまうというのは不条理ですよ。

 

同様な事故を起こし、車両保険に入ってなかったがために、二重にローンを抱えてしまったという事例は、知り合いの中だけでもこれだけにとどまりません。その方も、「高知ではクルマは必需品だから仕方ないですわ…」ってぼやいていましたよ。

 

もちろん、車両保険までカバーするフルコースで任意保険に加入すれば、不測の事態への備えも経済面においては万全です。いきなり、莫大な出費や二重ローンで苦しむことはありません。しかし、当然ながら掛け金は高くなってしまいますし、事故を起こすとさらに保険料が上がります。どっちにしても、結局は高いものについてしまいます。地方の安い給料では、かなりキツいで負担ですよ。

 

「車両保険まで入っておくべきだ」って簡単に言える問題ではないのですよね。

 

やっぱり公共交通を充実させていかないとマズいですよ!

 

クルマに頼りすぎた生活そして社会が、いかに高コストで脆弱なものであるか痛感せざるを得ない出来事でした。

 

今後も過度なクルマ依存を放置し続ければ、地方は疲弊していく一方だと思います。誰もが気軽に使える、安くて便利で安全に利用できる公共交通を一刻も早く充実させていかないと!!

 

クルマとスマホのために働く地方の若者。

 

昨年11月に書いた、地方在住者のただでさえ少ない所得が、クルマ関連の費用に多くを食い潰されてしまっているという話し。さらに掘り下げていきます。

 

nomotoyasushi.hatenablog.jp

 

中芸地域から高知市内までの約50kmをマイカー通勤

 

知り合いの例を具体的に取り上げて話しを進めていきますね。

 

少し極端な事例かもしれませんが、給料に占めるクルマ関連費用の割合が高く「クルマを維持するために働いているも同然」の典型例だと思っています。

 

本人のプライバシーに配慮して、生まれた年や住んでいるところは、やや曖昧にしておきます。また、原則として2012年当時で話しを進めていきますので、現在は細かいところで状況は変わっています。

 

平成1〜4年生まれの20代の女性の方で、中芸地域(奈半利町田野町、安田町、北川村のどれかです)に在住しており、高校卒業後は高知市内のとある会社で事務職として就職し、実家から職場までの片道約50kmを、週に5〜6日通勤(隔週で土曜日勤務)しています。

 

給料は、手取りで月13万円ほどだそうです。その中に、通勤手当約15,000円も含まれています。

 

通勤手段ですが、就職当初は免許もクルマもなかったので、土佐くろしお鉄道「ごめん・なはり線」利用でした。免許取得後はマイカー通勤に切り替えています。トールワゴンタイプの軽自動車を、新車で購入して毎月ローンを払っています。

 

マイカー通勤に切り替えたのは、至極当然のことだと思います。

 

安芸市以東ともなる田舎では、マイカーを持つのはごく当たり前ですし、そもそも持っていなかったら通勤以外での行動範囲が極めて狭くなります。「ごめん・なはり線」も安芸駅以東では、本数がぐっと減ってかなり不便になりますし、定期代も高知市内へ通勤すれば非常に高額です。マイカーがあれば、鉄道で通勤という選択肢はまずあり得ません。事実上、マイカー通勤一択です。

 

職場への往復だけで給料(手取り)の半分近くが消えている…

 

驚くことに、給料(手取り)の半分近くがクルマ関連に消えています。

 

毎月ローンを払い(月々15,000円ほど)、任意保険代を払い(月々10,000円ほど?)、もちろんガソリン代もかかります。ガソリン代は、かなり距離を走るのため月に15,000円〜20,000円程度はかかっているそうです。その他、税金、車検、修理代もろもろ…。

 

ざっと概算しただけでも、平均すると月々45,000円程度かかっている計算になります。ちなみに、「ごめん・なはり線」(+JR土讃線)の定期代もこれに近いくらいかかっていたそうです。調べてみたら、だいたい月に35,000円ほどです。

 

携帯電話代(だいたい月10,000円と言っていました)や生命保険代など、他の支払いを含めると給料のほとんどは残らないそうです。一時期、会社の帰り道に4時間程度アルバイトをして(それも週5日!)、やっとのことで小遣い確保&貯金していたほどです。

 

現実をきちんと受け止め、身の丈に合った生活をしており、アルバイトで補填までする頑張りようは素晴らしいと思いますが、正直なところ複雑な思いです。

 

社会の構造的な欠陥に、スッポリと嵌ってしまっているからです。

 

実家の近くに就職先がない(もしくは転職が難しい?)という点でも、給料があまりにも低すぎるという点でも、社会が公共交通を上手く活用できていない点でもす。

 

給料のあまりの低さについては、正社員で真面目に働いても生活保護レベルの額である(しかも、所得税、住民税、社会保険料は給料からきっちり引かれた上に、医者にかかればきっちり3割負担ですよ!)など、世の中どうかしているとしか思えません。アルバイトで上乗せした分(月50,000円程度?)は、本業の給料であってしかるべき額ですよ!

 

明らかに社会が歪んでいます。海外なら革命に発展してもおかしくないレベルですよ。しかし、こればっかりは構造的な問題ゆえに根本的な改善が難しいのも確かです。放っておいていいわけではないですが、今すぐどうこうできるものでもありません。言いたいことはいくらでもありますが、書き出したらそれこそ長くなるのでこの辺でやめておきます。

 

社会が公共交通を上手く活用できていない

 

ここで注目したいのは、やはり高額なクルマの維持費それに依存しなければ生活できない社会構造についてです。

 

給料の半分近くをも費やして、通勤手段に過ぎないクルマを維持しなければならないというのは、明らかに異常ですよ。

 

クルマが純粋な趣味で、クルマを持つこと、クルマに乗ることがその人にとって人生における至上の喜びというのでしたら、それでも一向に構わないでしょう。

 

しかし、勤務後や休日に遊びに行くのにも使っていると言っても、ほとんどが自宅と職場の往復での使用です。あくまでも、生活の糧を得るための手段であり経費のはずです。

 

職場へ往復した時点で、稼いだ給料が半分近くも消えてしまっては「いったい、なんのために働いているのやら…」って状態ですよね。

 

さらに片道50kmにもなる長距離を、事故のリスクを抱えながら毎日1時間半近く延々と運転して職場とを往復しなければならないという点も大きな問題です。体調が悪かろうが眠かろうが、神経を張りつめて運転しなければなりません。事務職の他に、運転手としてさらに毎日3時間も残業しているようなものですよ。

 

通勤など義務を伴ったクルマの運転は、もはや楽しいものでも何でもないと思います。つまらない上に、リスクを伴い神経を張りつめる作業でしかありません。

 

ドアトゥドアは、もちろんクルマの大きなメリットです。だがしかし、裏を返すと移動の最初から最後まで、全行程を自分で運転しなければいけないということでもあります。その間ずっと、神経を張りつめ続けなければなりません。移動の大部分を他人の運転に任せられる公共交通とは大きな差です。

 

少なくとも、公共交通の「ごめん・なはり線」が、もっと便利で安ければ、こんなことにはならないのにと思わざるを得ません。寝ながらでも、読書しながらでも、ゲームしながらでも安全快適に通勤できるのにです。

 

本来は、一度に大量の人を運べてスケールメリットが働く公共交通を活用した方が、一人一人が個別にマイカーを走らせるよりずっと効率的なはずです。通勤コストもずっと安くなるはずです。 しかし、現実にはマイカーを維持するのとさほど変わらない定期代がかかってしまいます。

 

何と言うか、社会の仕組みに不備があって公共交通を優先的に利用しやすくなってないのですよね。あるのに使いづらいくて、あまり利用されていない。非常にもったいないと思います。

 

地方の若者はクルマとスマホのために働いているようなものです

 

この事例は、通勤距離が長いだけにやや極端かと思いますが、地方在住の若者は、クルマもスマートフォンもたいてい所有しています。

 

程度の差はあれど、地方の若者の所得は総じて少ないので、クルマと携帯電話関連の支出は、かなりの割合を占めているでしょう。親のお下がりを譲ってもらった、就職祝いに買ってもらった場合などを除いて、クルマのローンも払っているでしょうし、携帯電話にしても次々に買い替えて、ほぼ全員がスマートフォンを持っていますしね。

 

地方の若者は「クルマとスマホを維持するために働いているようなもの」と言っても過言ではありません。

 

本来、クルマ、スマホは、あくまでも移動のため、通信のための手段に過ぎないはずです。メーカーとメディアの巧妙な戦略で、見事に目的化されていますけどね。ただの手段に、所得の多くを食いつぶされてしまうのは本末転倒に思います。

 

こんな状態では、クルマと携帯電話以外の他の消費は伸びませんは。服なんかも売れませんは。

 

最後に「高知市内に引っ越したら?」っていう意見は当然あるかと思います。そう思って聞いてみたところ、「職場の近くにアパートを借りようと考えたことは特にない」と言っていました。仮にアパートから徒歩や自転車で通勤できても、若い女性ともなればクルマを持たない選択肢はなかなかないと思います。勤務後や休日に、遠くまで出かける足がないというのはつまらないでしょうし。それだと、家賃や生活費に加えてクルマの維持費もかかってしまい、実家通いよりもさらに高くついてしまいます。そういうことも勘案して、実家通いがベターなのでしょう。

 

この話しはこれで終わりではありません。続きがあります。

 

続き:普通に生活していて突然借金(ローン)が増えてしまうクルマ社会の不条理。